- 1
- 2
今回の「健康やり直し倶楽部」では、「脳」をテーマに、進化における特異性から記憶の仕組み、さらには脳以外の要素(身体感覚、環境、文化)が人間の思考や行動に与える影響まで、多角的に掘り下げます。編集長の高橋さんと司会の川村さんが、雑誌「ナチュラルオルタ」第6号の内容を基に、上野圭一さん、池谷裕二さんらの知見や、アマゾンの先住民の生き方などを交えながら、脳と健康に関する新たな視点を探求。固定観念にとらわれず、行き詰まりを打破するためのヒントが満載です。
【出演者】
川村さん:司会
高橋さん:「ナチュラル&オルタナティブ ヘルスブック」編集長、株式会社ほんの木代表
川村さん:
皆さんこんにちは。
今回も「健康やり直し倶楽部」、今日は第6回目となりますが、高橋編集長にまたお話を伺いたいと思います。
お話を伺うのはファンの一人、川村です。
よろしくお願いします。
高橋さん:
よろしくお願いいたします。
川村さん:
今回は、脳がテーマということで、「脳から始める新健康習慣」というテーマでお話を伺っていければと思います。
よろしくお願いします。
実は先ほど雑談で話していたのですが、私は半年に1回ぐらい、近所の総合病院に行って色々な検査を受けています。
今日は天気が良いせいか、病院には多くの高齢者の方々がいらっしゃいました。
様々な悩みや病気を抱えた方々がこんなにたくさんいるのかと目の当たりにし、ある意味、日本の現状を垣間見た気がして、少し愕然としました。
先ほどの雑談の中で、編集長が、そういったことも脳のテーマに絡む話だとおっしゃっていましたが、今日はその辺りからお話を伺えればと思います。
よろしくお願いします。
人間の進化と脳の特異性
高橋さん:
今回のテーマは「脳」ですが、食べ物、運動、血液、疲労といったテーマで各号の話をしてきました。
その中で一つ、「脳とは何だろう」ということも取り上げてみたいと考え、この号の特集を組みました。
取材の中で、上野圭一さんの言葉をお借りして、「なるほど」と思ったことがあります。
それは、「そもそも人間は進化の過程で、脳と生殖器が異常に発達した。そのアンバランスさが、問題も引き起こすけれど、発明や科学技術の進歩にも繋がっている。それが人間らしさの証だ。」というお話でした。
記憶の仕組み:「リメンバー」と「リコレクト」
川村さん:
今おっしゃった上野さんの項目は、私も読ませていただいたのですが、非常に面白い文脈で書かれていますね。
記憶というのは、英語の「リメンバー(remember)」と「リコレクト(recollect)」を見ても分かるように、バラバラに散ったものをもう一度メンバーリングする(集合させる)、あるいは一度コレクトする(集める)という働きなのだ、ということです。
人間の脳の中にある記憶という機能が、実はそういった大きな役割を果たしている、というのも面白いと思いました。
また、「言葉に宿る力」ということで、「言霊(ことだま)」ということに関しても研究されていて、これもまた面白いなと思ったのですが、その辺り、少し教えていただけますでしょうか。
脳だけではない? アマゾンの先住民に学ぶ「今を生きる」知恵
高橋さん:
その前に、記憶や言霊の話の前に、脳の発達についてお話しさせてください。
脳の発達によって、様々な記憶や、記憶を基にした新しいアイデアが出てきます。
先日、私どもでも出版した本の著者の方、南研子さんとお話をする機会がありました。
その南さんは、アマゾンの熱帯森林の保護をされており、特に先住民インディオの方々の支援をずっとされている方です。
私たちがこうして酸素を吸っていられるのも、地球規模で見ると森林が発する酸素によって呼吸ができているわけです。
その森林が、文明の手によってどんどん消失していて、例えばレアメタルや貴金属乱掘、あるいは大量の食物を作るために、森が焼き払われ、広大な土地が毎年失われている、というのがもう何十年も前から続いている状況です。
川村さん:
アマゾンの森林を伐採し、パーム油を取るために植林するという、非常に人工的な産業構造のために伐採が行われ、結果としてアマゾンの肥沃な緑の森を破壊している、という話を聞いたことがあります。
そういった類いのものですか?
高橋さん:
そうですね。
アマゾンの森の問題は、環境破壊です。
そこで暮らしているインディオの方々は、住む場所を追われ、生活の場を失っています。
そのことに関して、南さんは毎年40回以上、1回につき1か月ぐらいインディオの方々のところへ赴き、様々な支援をされています。
その南さんが、先日おっしゃっていたのですが、インディオの方々には「言葉」という概念があまりないそうです。
未来もなければ過去もなく、あるのは「今」だけであると。
その「今」をどう生きていくかということに全てを集中して生きており、また、人はある程度の人数(確か500人と言っていたと思います)を超えると、そこで争いやいさかい、トラブルが起きるので、一つの集落がその人数を超えたら分かれていく、という形で、それ以上の集団を作らない生活を今でもずっとし続けていらっしゃるということなのです。
そこで結局、いつも南さんが行って気づくのは、やはりその人たちが、今の私たちにない「幸せ」をずっと持ち続けているということ。
それが人間の本質なのではないか、と。
記憶があることが前提の社会、ということ自体が、そもそも人の生き方を考えていく上でどうなのか、ということを少し思ったので、お話しさせていただきました。
脳は簡単に騙される?池谷裕二さんの研究
川村さん:
記憶という点で言うと、今回、この第6号を拝見して、一番面白かったのが、池谷裕二さんの「脳の磨き方」という特集です。
結論から言うと、脳は非常に身勝手で、良いと思えば良くなるし、ネガティブだと思えばネガティブになってしまう。
好き嫌いも根拠がなく、たまたま気分が良い時にある音楽を聴くと、その音楽が好きになったりする、という話でした。
実験的に、ペンを口にくわえるのですが、唇に触れないように歯だけでペンを縦にくわえている人(笑顔のような形)と、歯に触れないように唇だけでペンを横にくわえている人(口をすぼめたような形)とで、あるものを見た時の印象が変わるというのです。
笑った顔の形を作ることで、脳はそれを「楽しい」と判断してしまう。
人間の脳というのは、そのぐらい簡単に記憶や形にだまされてしまうものだ、という話を読んで、これは面白いなと思いました。
この特集の中で、この文章が一番面白かったです。
高橋さん:
池谷裕二さんとお会いした時は、まだ薬学部の修士課程にいらっしゃったと思います。
医学部の方ではないのですが、体のことに関して探究心が旺盛で、次々と興味が湧いてくる方でした。
今お話しされていることはよく分かります。
ただ、別の言葉で言うと、脳が作った言葉遊びの一つとも捉えられるかもしれません。
取材当時は、池谷さんの発想がユニークで、他にない視点から脳を捉えることができると思い、取材をお願いして掲載しました。
次のページでPDF限定公開中!!
- 1
- 2