#06 脳の不思議:進化、記憶、そして思考の裏側

脳だけではない?身体感覚や環境の影響

高橋さん:
別の視点、例えば上野さんの考え方や、帯津さんの考え方から見ると、人間の行動を決定する要因は、脳だけでは説明できない部分があると思います。
まだ未開発の感覚的な部分、シュタイナー医学で言うところの「エーテル体」や「アストラル体」といったものが関わっているのではないでしょうか。

例えば、今、川村さんとZoomで話しているのと、どこかの場所で2人で1~2メートルぐらいの距離を置いて話しているのと、電車の中で隣の席に座って話している時では、お互いの距離感が違います。
Zoomでは、距離の隔たりなく画面上で隣にいるように見えますが、実際に隣にいるわけではありません。
体温が伝わる距離で話をする時とは、もっと複雑な情報が入ってくるはずです。
そう考えると、自分の行動を決定する要因は、脳だけの話で片づけるにはもったいない気がします。

川村さん:
そうですね。
少し話がずれるかもしれませんが、先ほどアマゾンの話をした時に、レヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』という本を思い出しました。

民俗学、文化人類学の分野の本ですが、レヴィ=ストロースという、構造主義という考え方を広めた、あるいは発展させたフランスの学者です。
彼が主張しているのは、いわゆる「未開」とされる社会が土台にあって、その上に「現代」社会が来るというような段階的な発展ではなく、一つの生活形態の中で行われていることは、「未開」社会であろうと「現代」社会であろうと、構造的には同じであるということです。

家族がいて、規律があり、必要な事柄を自分たちができる範囲でこなし、暮らしを支えていくという構造的な営みに関しては、現代人も、いわゆる「未開」とされる社会の人々も、共通する点がたくさんあると指摘しています。
ですから、歴史修正主義的な見方で物事を捉えるのは誤りではないかと問いかけた方なのです。

高橋さん:
そうですね。
脳というのは、いろいろと深いテーマだと思いますし、なかなか「これだ」という一つの結論に全員が行き着くことはないような気がします。

編集の舞台裏:多様な知見を編む

川村さん:
ある意味、つかみどころがないというか、何が正解か言えない号だと思いますが、この号をまとめるにあたって、作り手側からのメッセージ、ポイントはどういったところでしょうか。

高橋さん:
今回、この号で取り上げた方々については、表紙の裏にまとめとして、一人ずつ、どのような話で、どのような方なのかを写真付きで紹介しています。
実は、その背景となった情報源、背景になった本を72ページから75ページまで「ガイドブック」として紹介しています。
私も脳に関しては素人なので、ゼロから勉強する時に、何箇所かの本屋さんに行って情報を集めました。
当時はインターネットでそういう検索をパパッとして色々な情報が出てくる時代ではなかったためです。

川村さん:
毎号、特集に合わせて本の紹介がありますが、これは素晴らしいですね。

高橋さん:
これが、言ってしまえばネタバレになりますが、本を作るに至った情報源なのです。
これらの本は、それぞれの著者が単独で書かれたもので、書かれ方や発想、内容も様々で、必ずしも整合性が取れているわけではありません。
それを、どのようにして一つのハーモニーとして奏でるか、という指揮者のような役割を果たしたわけです。

川村さん:
まさに編集の醍醐味ですね。

高橋さん:
読者のことを考えず、ひたすら楽しんで作った本かもしれません。

川村さん:
いや、素晴らしいですね。羨ましいです。

高橋さん:
ただ、一つの形にすると、そこからまた新しい定理が出てきます。
私は0から1を作るのは苦手ですが、1を10にするにはどうしたら良いかを考えるのは好きです。

川村さん:
まさしく編集者の性(さが)ですね。

読者へのメッセージ:脳にとらわれず、新たなアイデアを

高橋さん:
ぜひ、皆さんの置かれている分野でこの本を読むと、それぞれのタスク、要件に対して、何か新しいヒントが得られるかもしれません。
「仕事」という言葉はあまり好きではないのですが、対応しなければいけないことに対する対応の仕方の、新しいアイデアになると思います。

例えば、料理をする時に、蒸す、炒める、温めるなど、色々な方法がありますが、自分という「素材」をどのように「料理」するか、という方法の新たな一つのアイデアになると思います。

ですから、脳ということにとらわれず、今、自分が抱えている悩みや解決したい問題がありましたら、タイトルや見出し、写真だけでもヒントになると思います。
そこから新しいアイデアや行動力が出てくるのではないでしょうか。

「ナチュラルオルタ」でも、以前だした「自然治癒力」というシリーズでも、脳をテーマにした号が一番人気がありませんでした。

川村さん:
それはなぜでしょうか。

高橋さん:
結局、直接的に自分に関係がないと感じられるものは、読者にとっては必要のない情報と捉えられがちだからだと思います。
例えば、「運動力を高めたい」「呼吸を気をつけたい」「良い眠りをしたい」といった具体的な悩みや願望には響きやすいのですが。

川村さん:
しかし、その根幹になっているというか、司令塔としては脳というのが最も重要な器官ということですよね。

高橋さん:
もし、この本をもう一度作るとしたら、そういったことを踏まえて、どのようなタイトルにしたら良いか、ぜひ川村さんにご教授いただけると嬉しいです。
そうしたら、また作ってみたいと思います。

川村さん:
私自身、今日で6回目ですが、今までで一番興味を持って読ませていただきました。

高橋さん:
著者の方々には失礼かもしれませんが、何の変哲もない話ばかりかもしれませんし、直接的には関係のない話かもしれません。
しかし、非常にこの号は読んでいただきたいと思っています。
もし、情報をまとめる機会がありましたら、ぜひこの号の内容を紹介していただけると嬉しいです。

川村さん:
お聞きになっている方々にも、URLからぜひ一読をおすすめしたいです。
本当に面白いですね。
人間の根幹、最も根源的な部分に関わるテーマがここにあるのではないかと感じました。

「ナチュラル&オルタネイティブ・ヘルスブック」6号ダウンロード

では、今回はここまでということで、次回またよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。

高橋さん:
どうもありがとうございました。


※雑誌「ナチュラル&オルタナティブ ヘルスブック」は2007年から2009年にかけて出版されたものです。そのため、記事の内容は当時の状況に基づいています。

自然治癒力を高める新シリーズ
「ナチュラル&オルタナティブ」 ヘルスブック

 こちらからお買い求めいただけます。