夜光虫の海を取り戻す
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静かな町・真鶴の素顔
神奈川県真鶴町は東京から東海道線で約1 時間半。すぐ近くには湯河原や熱海、箱根などの日本有数の温泉・観光地があります。海があり、首都圏とは思われないほどの自然に恵まれた町です。また、真鶴町には温泉がないため、観光地にはならず、静寂で平和な町です。
バブルの波と「美の条例」の誕生
この静かな町に1980年代後半、バブル景気やリゾート開発の波にのり大型マンションなどの計画がおしよせました。景観が壊されるだけでなく、インフラの破綻や、人口1万人の平凡で平和な暮らしが壊される可能性がありました。
これが「美の条例」制定の大きな動機となったのです。
「美の条例」とは、一言でいうと、地域の固有な伝統と文化、暮らしに基づいたルールで建築物をつくることで地域を美し
い町にしていこうとする条例です。真鶴町はその後、開発ラッシュをはねのけることができましたが、「美の条例」制定から
30年後、別の問題を抱えることとなりました。
持続可能な町づくりを問う
人口減少や産業の衰え、空き家の増加が進み、神奈川県で唯一「過疎地域」に指定され、「消滅可能性自治体」にも分類さ
れてしまったのです。かつて町を救った条例は、縮小のこの時代にも「町の憲法」として生き続けることができるのでしょうか。本書はこの核心に丁寧に迫ります。
著者は、「美の条例」制定にかかわり、町の推移を見守ってきて、真鶴町をなんとか再生したいとの想いでこの本を書きました。
「美の条例」とは何であったのか、人々の平和な暮らしとはどういうものなのかをもう一度世に問うています。「まちづくり」はそこに住む人たちの努力によって守られ、継続するもの。人口減少が続く日本にとって過疎化は大きな問題であり、放っておいては手遅れになります。
本書を読み終えるころ、自分たちの町を見る視線が確かに変わります。真鶴だけの話ではありません。全国の地域に向けた実践の手引きとして、強くおすすめしたいと思います。

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四六版 328ページ 3,080円(税込)
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