仙台市太白区坪沼にある、学びの多様化学校ろりぽっぷ小学校を訪ねてきました。
仙台駅から生出まで路線バスで約40分。そこから学校のある坪沼地区までの路線バスは2 0 0 6 年に廃止となり公共交通機関はありません。
宮城県初の私学の学びの多様化学校
過疎化の進んだこの地で、なぜ開校したのかと問うと、「不登校になって苦しんでいる子どもたちを見過ごせなかったから」と髙橋校長は答えてくれました。

教室には様々な形のテーブルやカラフルな椅子があったりヨギボなどを置いてお家のような環境を目指している。
2023年度に文部科学省が発表したデータによると宮城県では、不登校児童生徒の数が過去最高を記録し、1000人あたりの不登校児童は46. 7人で全国平均(約27人)を大きく上回っています。以前から支援体制の取り組みが急務とされてきましたが、県内の公立小学校だけでは対応が追い付いていないのが現状です。そのため私立の学びの多様化学校を、2023年4月に開校したのです。
ろりぽっぷ小学校の理念は、子どもたちの声に耳を傾け「子どもの心に寄り添う」教育です。そして大人も子どもも共に育ち合うことを大切にしています。オランダで取り組まれている「イエナプラン教育」のコンセプトを取り入れたり、「人間キャリア科」を新設し、コミュニケーション能力の向上を目的とした心理教育を活用した人間関係づくりを学んでいます。また、保護者を交えての授業を計画したり、児童に悩む保護者の支援もしています。

子どもたちを育む環境
子どもにとっては、毎日その日その日がかけがえのない経験になります。
そのため、年度途中にも定期的に入学説明会を行ない、いつでも転校を受け入れています。実際、2024年4月の在校生は27名でしたが、2025年3月は36名と学年途中で9名の転入生がいました。
ちなみに2025年4月現在の生徒数は、1年生1名、2年生3名、3年生4名、4年生8名、5年生11名、6年生9名の計36名です。そのほか、必要な時にはすぐにお手伝いができるように動いてくれる保護者の方が多く、たいてい誰かしら保護者が学校にいます。保護者への環境も整っていて、校内の保護者ルームには読書やデスクワークをする場所もあります。
ありがたいのが地域の方との繋がり。地域のおじいちゃん、おばあちゃんが、子どもたちに丁寧に関わってくれます。子どもたちが釣りをしていると「そこ釣れねえぞ」とか「あー、餌はこれがいいよ」と言ってくれたり、たけのこの季節になると「堀りに来るか」と声かけてくれたり、子どもたちは人の温かさをたくさん感じています。
明日また行きたくなる学校
小学校、中学校時代を振り返ると、楽しかったり、失敗したり、怒られたりした経験、放課後遊んだこと、美味しかった給食、友だちとの関係、そういったことが、たくさん思い出として残っています。
学力は、頑張れば大人になってからでも取り戻せるけれど、思い出というのはその時にしか作れないのじゃないかと思います。子どもたちには小学校、中学校時代にたくさんの思い出を作ってほしいです。
ろりぽっぷ小学校では、学力=楽力とかかげていますが、子どもたちが社会に出た時に、自分らしく輝けるように、学校生活の中でたくさんのことを試してその子なりの得意や自信を見つけてもらいたい。子どもたちが安心して自分らしく学ぶことができる場、そういった場所がろりぽっぷ小学校でありたいと高橋校長は力強く語ってくれました。



保護者の声
新しい居場所で子どもの笑顔を取り戻せた
我が子が不登校当事者になるなんて…。でも、不登校になってくれたおかげで、我が子が苦しんでいることに初めて気がつきました。「夫婦関係」「親子関係」「家庭環境」など全てを見直し、あらためて子育てに向き合うことができました。
初めはクラスに入れずホールで過ごしたりしていましたが、先生方の声がけのお陰で今では学校中に我が子の笑い声が響いています。
学校は安心できる場なんだと思えるようになった
学校では、似た思いを味わってきた親同士、繋がりを持つことができて救われました。先生方は、どんな子どもにも根気強く寄り添ってくれ、愛がないと出来ないことだと日々感謝しています。とても繊細さんの我が子は、初めてのことや苦手なことに取り組むまでに時間を要しますが、先生方は強要せずにタイミングを見て声がけしてくれます。何よりも子どもが、学校は安心できる場なんだと思えるようになったことがとても嬉しいです。
(取材・文 ほんの木 高橋利直)