“実践”食べもので治す文明病
今、注目の酵素がわかる!
鶴見隆史 鶴見クリニック院長
慢性的な頭痛や肩こり、腰痛、「治らない」といわれたアレルギーやぜんそくなどの病気も「酵素を含む食べものを摂ることで改善できる」と鶴見先生はいいます。現代医学と東洋医学に通じ、さらに酵素栄養学にもとづいた酵素医療で、がん、膠原病などの治癒も実現させています。
今、現代人が知っておきたい「酵素」について、さらに、「酵素が病気を治すしくみ」について、うかがいました。
体にふさわしい食べものを食べていますか?
アメリカでは今、がんなどの難治性の病気が「食原病」であるとして、国をあげて従来の肉食中心の食生活が見直されています。
日本人も、肉などのタンパク質や、白砂糖、酸化した油脂などを食べすぎています。たとえば、タンパク質はアミノ酸まで分解されてから体内に吸収されるのですが、過剰に摂りすぎると、消化が不十分なまま腸に運ばれます。
中途半端なタンパク質分子(窒素残留物)は排泄も吸収もされず、腸内の悪玉菌のえさになります。すると、腸内環境が悪化します。
こうした消化不良の状態が、がんや関節痛、アレルギーなど、現代にはびこるさまざまな病気を引き起こす原因となっているのです。
食べものの消化と吸収が体内環境を左右します
体内にある酵素は潜在酵素と呼ばれ、一定の量で消化か代謝のどちらかの用途に使われています。
タンパク質をアミノ酸に分解するのは消化酵素です。タンパク質を摂りすぎると、消化酵素が大量に使われ、その分、代謝酵素に回る量が少なくなります。
さらに現代人は、添加物の入った加工食品を食べ、ストレスの多い夜型の生活を送り、運動不足にもなっています。これでは、消化酵素がたくさん消費されても、必要な栄養素の吸収は妨げられます。
また、体の活動を維持し、病気から体を守る働きをする代謝酵素が減るので体調を崩します。体内酵素はフル回転なので、外部から、つまり食べものに含まれている酵素から、補うしかありません。
消化酵素と代謝酵素のバランス
- 体内の潜在酵素
消化酵素と代謝酵素は一定のバランスに保たれている。 - 酵素のたっぷり入ったものを食べたとき
消化酵素の節約になり代謝酵素の働きが強くなる→病気になりにくい体質に - 酵素を含まない食べものを食べたとき
体内の消化酵素の働きが強くなり代謝酵素不足となる→文明病の原因になる
人間の体にとって本当に必要な栄養素とは?
人間に必要な栄養素には、炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維に水、さらに必須微量栄養素としてファイトケミカル(抗酸化物質)があります。酵素はその次の栄養素といわれていますが、人間の生命を左右する栄養素であることは間違いありません。
酵素は、植物でも動物でも、命あるものすべてに含まれています(食物酵素)。これらを生で食べることによって、体に取り入れることができます。
一方、体内にある酵素は3000種類以上といわれ、消化酵素のほか、あらゆる器官、組織でさまざまな代謝酵素が活動しています。
消化酵素によって、三大栄養素の炭水化物、タンパク質、脂質は、それぞれブドウ糖、アミノ酸、脂肪酸などに分解されます。栄養素は最低限まで分解されてはじめて、体内に吸収されます。
つまり、どれだけ健康に気を使ったものを食べても、栄養素を体に吸収できるかどうかは消化酵素が握っているのです。
酵素には働く場が山ほどあります
タンパク質などの過剰摂取が問題なのは、消化酵素がいくら働いても、吸収されるだけの大きさになかなか分解されないことです。
その上、体内には白砂糖やカフェイン、アルコール、それにしばしば薬や添加物といった化学物質まで入ってきます。とくに薬や添加物は、人間にとっては「異物」ですから、消化にたいへんな負担となります。
これでは、消化酵素を使いすぎて、代謝酵素が足りなくなります。
どんなに良いものを食べても酵素がなければ意味がない
代謝酵素は、呼吸や、体温の調節、歩く、笑うなどの筋肉を動かすことなど、あらゆる生命活動に関与しています。また、代謝酵素が少なくなると、血液や神経、組織などをつくり出すこともできません。まばたき1つをするにしても、代謝酵素が必要なのです。
脳や心臓、肺、腎臓などで数多くの代謝酵素が働くことによって、私たちの体は正常に動くことができ、病気やけがをしても、もとの状態に回復することができます。代謝酵素が十分に働かなければ、病気になります。
つまり「人の寿命は体内酵素によって決定される」のです。酵素の持つ力に着目し、酵素栄養学を提唱したアメリカのエドワード・ハウエル博士が定義した通りです。
消化メカニズムと酵素
摂取
口腔
唾液のアミラーゼによってでんぷんが消化される。
胃
胃液のペプシンによってタンパク質が分解される。
小腸
小腸内の各種酵素によってタンパク質はアミノ酸に分解。また炭水化物や脂肪も体内に吸収されやすい物質に分解される。
大腸
水分や無機質などの幾分かが吸収される。
排泄
消化、吸収、排泄をトータルで考えるのが酵素栄養学
消化が問題なく行われているなら、胃や小腸でこまかく分解された栄養素は体内に吸収されて、エネルギーになります。また、血液を通じて全身に運ばれ、細胞の新陳代謝を活性化させます。さらに、吸収に不要なものは速やかに排泄に向かい、健康が維持されます。
しかし、消化がうまくいかなければ、せっかくの栄養も吸収されません。排泄もされずに腸にとどまる残留物となり、腸内環境を悪くします。血液も汚れます。
消化は生命活動のなかでもっともエネルギーを使います
日本の栄養学では、摂取することばかりに重点がおかれていますが、そうではなくて、消化、吸収、排泄をトータルで見ることが重要です。なかでも、消化はあらゆる活動の中でもっともエネルギーが費やされます。本来、消化酵素は大事に使われるべきものなのです。
しかも、酵素は人それぞれ一生の生産量が限られています。消化酵素はできるだけ節約し、抑えた分を代謝酵素に回して、体の修復作業や免疫力の強化に回すことが必要です。そのために、生の食べものから酵素を補うことが最優先になるのです。
「良い栄養とは、何を食べたかではなく、何を消化し、吸収させたかで決まる」と鶴見先生。食べもので健康になる原点です。
知っておきたい酵素栄養学の2つのポイント
3000種もある酵素ですが、それぞれの酵素はそれぞれ1つの仕事しかしません。タンパク質を分解する消化酵素は延々とタンパク質だけを分解します。
また、分泌される酵素の種類や量は、何をどれだけ食べたかによって異なります。食べものの種類に応じて、体は、そのときにふさわしい酵素だけを、適切な量だけ分泌させます。これを適応分泌の法則と呼んでいます。
つまり、食べすぎてしまえば、その分だけ消化酵素は分泌され、消費されてしまうのです。
そこで食物酵素の出番です。動物や人間の体には、食物酵素を利用した事前消化を行うしくみがあります。
食べものから酵素をとれば体内酵素がよろこぶ
たとえば、牛には胃袋が4つありますが、消化酵素を出すのは最後の4つ目の胃だけです。ほかの3つの胃では、植物に含まれている食物酵素で消化を行っています。これが事前消化で、消化酵素を節約し、少しでも代謝酵素に回すために、食物酵素を利用します。
人間の胃は1つしかありませんが、胃の入り口部分がそのしくみを行っています。つまり、胃に入る前の段階で、できるだけ消化を進めておいたほうがよいのです。
しかし、胃に入る前では炭水化物(でんぷん)の消化が働くだけで、タンパク質や脂肪を摂った場合は、事前消化がいっさいないまま胃の上部にとどまります。摂りすぎれば、消化は不完全になります。
私たちは「完全な消化」のために、食べものが持っている酵素の力を借りる必要があるわけです。
著者情報
つるみたかふみ
1948年、石川県生まれ。金沢医科大学卒業後、浜松医科大学で研修勤務。西洋医学のみならず、東洋医学、鍼灸、筋診断法、食養生などを追究し、つねに患者優位を念頭においた統合的な「病気治し医療」に取り組む。最近は、アメリカで酵素医療を実践する第一線のドクターたちと密に交流、最新の医療を取り入れて難治性疾患の治療に効果を上げている。著書に『スーパー酵素医療』(グスコー出版)、『長生きの決め手は「酵素」にあった』(河出書房新社) 『真実のガン治しの秘策』(中央アート出版社)など多数。
(『「自然治癒力を高める」新シリーズ「ナチュラル・オルタナティブ」ヘルスブック⑩ 知らないと怖い!文明病と生活環境病 生き方を変えれば病気は治る』より抜粋)
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