心と体と生命に働きかける新しい代替療法
世界の代替療法マップ
利用者の立場からそれぞれの目的にあった代替療法を見つけるために、今号と次号の2回にわたり、現在、注目を集めている代替療法を紹介いたします。(8号で西洋、9号で東洋が起源の代替療法をご紹介します)
代替療法は、その時代的背景や地域的特性から整理すると、下記の「花びら型の分類法」で表せます。この「花びら型の分類法」を見ると、代替療法には、ハーブ(薬草) 療法やアロマ (精油) 療法のように先人の知恵として生まれたものから、ホメオパシー医学やアントロポゾフィー医学のように近代医学の体系の中から、代替療法に逆に飛び出していったものもあります。
これらの区別は、代替療法を利用する際に治療者も利用者も、その代替療法の治療的効果を十分に得るためには、ぜひ知っておきたい事実です。
代替療法も現代医学も、その出発点では同じである
悪魔払いや呪術、薬草などを用いて病気や怪我を取り除く古代シャーマニズムを出発点に、世界の各地域で誕生した伝統医学の中で、ギリシャ・ローマ医学とイスラム医学が混ざった文化を母体に生まれたものが近代医学です。
近代医学は、それまでの伝統医学の基礎を築いた古代シャーマニズムの手法をしりぞけ、病気を科学的にとらえる医学体系です。
このギリシャ・ローマ医学に端を発した近代医学は、19〜20世紀に隆盛を極め、現代西洋医学を確立しました。日本でも明治維新(1867年)以前には漢方医学が主流でしたが、文明開化とともに西洋医学が国策によって導入されるようになり、それまでの漢方医学を駆逐し、瞬く間に日本国内における医学の支配的な立場を確立しました。
こうして現代西洋医学は、20世紀には先進国で圧倒的な支配力を持ちましたが、同じ20世紀の後半には、その内部に存在するさまざまな問題点が指摘されるようになり、これまで西洋医学によって片隅に追いやられてきた種々の代替療法が、再び人々の注目を集めるようになってきたのです。
代替療法の矛盾と共通項
代替療法は、その地域や時代的背景により誕生の経緯がそれぞれ違います。そのため複数の代替療法を比べた場合、互いの治療法に矛盾が生じることがあります。
代替療法に詳しいアメリカの医師、アンドルー・ワイル博士は著書『人はなぜ治るか』のなかで、この疑問を以下の6つの項目でわかりやすく回答しています。
- 絶対に効かないという治療法はない
あらゆる代替療法は、体の組織などにおいて解剖・病理的な異常が見あたらないにもかかわらず器官や臓器などの働きが低下する機能的疾患だけではなく、内臓や神経、筋肉、器官といった各組織において病理的・解剖的な異常が生じた事により引き起こされる器質的疾患にも治癒例があります。 - 必ず効くという治療法もない
すべての治療法は、治効理論がいかに論理的・科学的にみえようと、いかに望ましい処置を施そうと、ときによっては治療に失敗することがあります。現代西洋医学でもこの結果は同じであり、これは科学が無効性を証明している治療法がなぜ効くのかという問題に劣らず重要です。 - 各治療法はつじつまが合わない
代替療法の世界では、互いにつじつまが合わない理論に基づいた治療法がたくさん存在しています。これは治療へのアプローチは違っていても、その本質においてすべての治療法には共通のなにかがあるからです。また、さまざまな治療法があるおかげで、利用者はそれぞれに最も適した治療法を見つけることができます。 - 草創期の新興治療法は効く
それぞれの代替療法には、新しく樹立された治療法が時代とともに力を失っていくという傾向があります。かつて多くの病気の治療にめざましい成果をあげた治療家たちも、1、2世代の弟子たちにはその技能を伝承できていても、ときが経つにつれて、たとえ師の教えを忠実に守っていても治療効果は弱ってしまうものです。 - 信念だけでも治ることがある
ルルドの泉※のように霊場や癒しスポットを訪れるだけで器質的疾患が治りうるという事実は、体に何ひとつ刺激を与えなくても、信念の力だけで治療効果が得られるということを示しています。健康と治癒を包括的に考えるためには、この事実も受け入れなければなりません。 - 以上の結論を包括する変数は治療に対する信仰である
ひとつの治療法を信じる度合いは、治療家によっても患者によっても大幅に異なります。信念だけでも治癒力が発動するとすれば、人によっては納得できない治療法が他の人には効くことは、それほど不思議なことではありません。
※ フランスとスペインの国境の町、ルルドのある泉。医師から見放された病がこの泉の水によって癒されるといわれている。
代替療法を積極的に利用して、自分の体にもっと責任を持つ
病気であることと健康であることは相反する2つの状態ではなく、病気も健康も、人のあり方の1つにすぎません。ワイル博士が、前述のように代替療法を包括する変数は信仰、つまり強い信念であるといってるように、信仰によって自然治癒力が高まると言い表すことができそうです。自然治癒力とは、心の偏りや、体の滞りを取り除いて生命エネルギーの流れやバランスを回復させる力のことで、この力が高まると人は自ずと健康になっていきます。そして、この自然治癒力を高めるための、心や体を癒すさまざまなアプローチが代替療法なのです。
このようにして、それぞれの代替医療の特徴と、治癒のプロセスを理解すると、人は自分の体に対してもっと責任を負うことができるようになります。
自分の健康に自分で責任を負うためには、医師や医療機関を頼って健康問題を解決するという姿勢を、私たちも改めなければなりません。
そうすれば、自分にもっとも適した代替療法を見つけることができ、それぞれの人にとって適した治療法や治療家に出会うことができるようにもなります。
著者情報
監修 上野圭一 翻訳家・鍼灸師
クレジット
化粧文化第44号(2004年6月ポーラ文化研究所刊) P74 図表を一部修正して作図しました。
(『「自然治癒力を高める」新シリーズ「ナチュラル・オルタナティブ」ヘルスブック⑧ ホメオパシー、アントロポゾフィー医学、バッチフラワー、ハーブ療法… 心と体と生命を癒す世界の代替療法 西洋編』より抜粋)
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