学校が今変わりつつあります。子どもたちに「個別最適な学び」や「協働的な学び」をと言われる中、学校現場では実際にどのような取り組みがなされているのか?
今年1年は各所での取り組みを紹介していきます。これからの世界を担う子どもたちを育てる責任は私たち大人。
子育ては過去のことと思わず、関心を持ち続けられたらと思います。
日本のイエナプランスクールについて〜5つの流れ
この場でも何度も紹介しているイエナプラン。オランダ在住の教育・社会事情研究家のリヒテルズ直子さんは、2004年からオランダのイエナプランの学校制度がどのようなものかを長年伝えてきました。その甲斐あってか、2011年頃からはイエナプランが徐々に日本で浸透し、その後オランダで研修を受けた方たちが実際に個別の教室で始め、2018年頃からは学校として実践するという動きが出てきました。
昨年広島で開催された「イエナプラン100周年記念イベント」で、リヒテルズさんは日本のイエナプランについて語りました。
「今、日本の中でのイエナプランには5つの流れがある」
1.まずはイエナプランを普通校で導入していくという流れ。理想はなかなか遠い現状。
2. 不登校の子どもを対象とした学びの多様化学校。現状では、これが非常に可能性を含んでいるという風に感じる。
3. 自治体による学校改革の一部として、既にイエナプランの影響を受けている人たちが教育行政や教育委員会の中にいて、その中から変えていくという動きが実際各地で起きている。
4. 就学前教育の中でのイエナプラン。これもかなり早いテンポで広がっていくだろうと思う。
5. 学童保育や不登校の子どもたちが通うフリースクール。緊急策としてはたいへん大事だが、フリースクールがやっているから行政は手をつけなくてもいいとならないようにしたい。
「この5つの流れはどれも大切で、必要があるからできてきているのだが、日本の場合もう一つ別のベクトルで教育を見直す必要がある」とも言います。
本当の教育改革は公教育を変えること
公教育の「公」は、本来「私たち」の意味ですが、日本の公教育は私たちのものとなっていません。元々政府主導型で始まった日本の公教育は、官教育なのです。
イエナプランが目指すのは民主的な学校です。私立の学校も公立の学校も公教育を受ける学校はみんな私たちのものでなくてはいけないからです。もっと広くとらえると、イエナプランが目指すのは社会すべてが民主的であることなのです。
日本では未だに、「子どもは文句を言うな」「先生の言うことを聞きなさい」と、子どもとの対話を軽視したり、多様な意見を引き出すことをしない一方的な教育が残っています。「リーダーの意のままに動くだけの人ばかりの国の将来を、皆さんはどう思い描くでしょうか」とリヒテルズさんは、私たちに問いかけています。

イエナプラン、これからの課題
リヒテルズさんはこう結びました。
「私たちは、日本という社会をどこに向けていきたいのでしょうか。どんな人たちを社会に送り出したいと思っているのでしょうか。教育をイエナプランに変えることによって、社会にどんな人たちが育っていくのでしょうか」
「イエナプランについて繰り返し話し続けていくこと。同時に、行政へ働きかけること、法律に方向性をもたらしていくこと。これがイエナプランを進めるためにこれからの課題だと思います」と。
(取材・文 ほんの木)
今後、日本イエナプラン教育協会がリーダーとなって、国会議員に「日本の教育におけるイエナプランの進展」を説明するレクチャーを霞が関で開催するプランが持ち上がっていると聞きました。2025年はイエナプランが日本の公教育にさらに浸透する手応えを感じます。
