寝たきり老人にならないための実践ワーク ②

物忘れ予防に今すぐできる事……高齢者でもできる脳トレ

「あー、あの女優さんきれいだったわよね。あれよ、あれっ、あのドラマに出ていたあの人。顔はわかるのに名前が出てこないわ」
 人の名前や番組タイトルなど、知っているのにどうしても思い出せない経験は、誰にでもあると思います。こういう「物忘れ」は、50才前後から起こりやすくなると言われています。
 必要なことが思い出せないと、記憶が消えたと思いがちですがそうではありません。脳の中にある記憶を引き出す力が弱ってきたために起こる現象です。
 でも、脳を的確に刺激することで、何才からでも「物忘れ」をしにくくさせることができるそうです。

インプット30アウトプット70

 インプット30アウトプット70と言う言葉があります。米国のある学者が行った実験によると、インプットとアウトプットの最適な比率は、30 70だそうです。つまり、インプットで得られるのは30
%。残り70%をアウトプットすると、記憶はより脳に定着して自分のものになる、ということです。
 簡単にいうと、インプットとは知識を覚えること、アウトプットは覚えた知識をはき出すことです。このアウトプットを日常生活の中で少し意識するだけで、「物忘れ」しにくくなるという報告があ
ります。
 アウトプットは「物忘れ」防止に良いというのがわかったとして、いったい何をすれば良いのでしょうか。

アウトプットには色々な方法がある

 例えば、テレビを見るのはインプットです。でも誰かと話しながら見たり、クイズ番組で積極的に答えてみるのならアウトプットもできます。またテレビを見た後に、誰かにその内容を話したり、メモや日記に感想を書くことができればアウトプットになります。
 クイズやクロスワードパズルを解くこともアウトプットです。例えばクロスワードは、マス目を埋めるためにいろいろな言葉を思い出さなければなりません。縦のカギ、横のカギを頼りに、自分が知っている言葉を思い起こしマス目を埋めていきます。同じように、クイズを解いてみるのも良いでしょう。
 人と話をすることも効果があります。たわいもない話でも構いません。相手の話を聞いてインプットし、そして自分から話してアウトプットする。会話は物忘れ防止に効果的です。もし、最近会話が少なくなってきたなと感じているなら、友人に電話するなど、積極的に会話の機会を増やしてみるのも良いのではないでしょうか。

 他にも、ひとり暮らしで話す相手がいない方は、もし犬や猫のペットを飼っていれば、散歩の時に犬とか猫に語っても良いし、ひとりでつぶやくだけでも効果があるそうです。
 これを繰り返していると、何ができたか、何ができていなかったのかということを、よく整理できるようになり、あれはどうしたのだろうとか、あれはどこに行ってしまったのだろう、と、迷わなくなります。

アウトプットの継続こそが大事!

 アウトプットは最初から成果を出せなくても良いのです。失敗やうまくいかないこともあります。アウトプットを続ける努力をしているうちにきっと成果につなげることができると思います。
 アウトプットができるようになると、冷蔵庫の前に立って、冷蔵庫を開けたはいいけれど、「あれ、私何を取りに来ていたんだろう」とか、調べ物をしている途中に、なんとなく他のことに気が移ってし
まい、「何を調べていたのか分からなくなってしまった」というようなことも軽減されるでしょう。
 ところで最近の私の母ですが、「今の状態がすべて良いとは言えないけど、なんとか自分のことは自分でできていると思う。でも、ちょっと足腰が弱ったり、これ以上物忘れがひどくなったら、今の生
活は維持できないと思う」と言っています。
 新聞を読んだり、テレビを見たりすることは日常になっていますが、誰かと話したり、メモや日記を書くことは、毎日のルーティンにはなっていないようです。
 母に、「インプット30アウトプット70」と説明しても、またややこしくなるので、何が母にとってのアウトプットになるのか、密かに研究中です。

高橋利直

1959 年生まれ。大学では工学部電子工 学を専攻。1984 年大卒後IHI に入社。火 力発電所の制御設計に携わる。1986 年3 月にIHI を退社。4 月から頭とお金を提供 してくれた創業者柴田さん、体と汗を提 供した私、他1名でほんの木設立の準備が スタート。1986 年6 月に、株式会社ほん の木創業。2003 年より代表取締役。