ロゴほんの木

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虚空との対話|【人生の幸せは後半にあるシリーズ④】

帯津三敬病院名誉院長 帯津良一

 八十九歳にもなると、目に見える世界よりも、その向こう側の「見えない世界」がだんだん身近になってきます。私はそれを、広く澄んだ「虚空」と呼びたくなります。そこには、先に逝った師や家族、私を育ててくれたおばさんたちが、静かに腕を組んで待っていてくれるような気がするのです。

若いころの私は、空手に明け暮れ、麻雀を打ち、酒を飲んで、目の前のことだけで精一杯でした。死後の世界など、考える余裕も興味もなかった。しかし八十代の半ばになってふと、「ああ、あちら側にも、自分の居場所が一つあるのだな」と思える瞬間が訪れました。そのとき、胸の奥の重しがすっと軽くなり、また走れるようになったのです。

虚空は、こちらの声にすぐ返事をくれるわけではありません。それでも私は、毎晩のように一杯やりながら、心の中で話しかけます。「今日はこんな患者さんが来たよ」「まだもう少し、こっちで働かせてくれよ」と。返事は聞こえませんが、不思議と「うん、わかった」という気配だけは伝わってくる。これが、虚空との対話です。

健康法というのは、本来「どう長生きするか」ではなく、「虚空と対話しながら、最期までどう自分らしく生きるか」を整える作業ではないでしょうか。死は、人生の終わりではなく、虚空のほうへ一歩踏み出すタイミングにすぎない。そのときまで働き、飲み、ハグし続けることができれば、それで上出来。そんなふうに虚空と語り合いながら、私は今日も養生を続けています。

帯津良一さん太極拳

帯津先生写真

プロフィール
東大医学部卒の医師。外科医としての経験を土台に1982年に埼玉・川越で帯津三敬病院を開設、2004年には池袋に統合医療の拠点(帯津三敬塾クリニック)も立ち上げた。西洋医学に漢方・気功・食事などを重ね、「医療と養生の統合」を目指すホリスティック医学を提唱。NPO「場の養生塾」などで“いのちの場”を整える暮らし方を伝え、日々の気功を欠かさず現役医師とともに講演を続けている。

帯津 良一先生 の「人生の幸せは後半にある」 シリーズ
▶ 第1回 「ナイスエイジング」のすすめ
▶ 第2回 六義園と若尾文子―結婚と「色気」をめぐる思い出
▶ 第3回 死ぬ日まで働き続けるための養生―脳梗塞と下半身を守る
▶ 第4回 虚空との対話
高橋利直
ほんの木
代表取締役社長
高橋 利直

 

1959 年生まれ。大学では工学部電子工 学を専攻。1984 年大卒後IHI に入社。火 力発電所の制御設計に携わる。1986 年3 月にIHI を退社。4 月から頭とお金を提供 してくれた創業者柴田さん、体と汗を提 供した私、他1名でほんの木設立の準備が スタート。1986 年6 月に、株式会社ほん の木創業。2003 年より代表取締役。