自分で治す健康問題
やさしい 福田-安保理論 第1回
「なぜ病気になるのか」から考える福田-安保理論
監修 大内晃一
私たちは、風邪をひいたり、疲れがたまると体調を崩したりします。そのたびに「なぜ病気になるのだろう」と考えたことのある方も多いでしょう。新潟大学医学部で長年、免疫と自律神経の研究に取り組んだ故・安保(あぼ)徹先生は、「病気は体の失敗ではなく、体を守るための適応反応でもある」というユニークな視点から、人間の体をとらえ直しました。
本連載では、福田-安保理論を、安保先生が教鞭をとられていた新潟大学大学院医歯学総合研究科に、当時在籍していた大内晃一先生監修のもとで、丁寧にひもといていきます。
福田-安保理論の出発点は、免疫の働きと自律神経のバランスにあります。人の体には、外から入り込む病原体とたたかう「白血球」がありますが、その白血球には、異物を攻撃する顆粒球と、ウイルスやがん細胞を処理するリンパ球など、いくつかのタイプがあります。安保先生は、交感神経と副交感神経という自律神経の働きが、この白血球のバランスを大きく左右していることを、福田稔医師とともに臨床と基礎研究の両面から示していきました。
交感神経が緊張しすぎる生活――たとえば、過度なストレス、長時間労働、緊張を強いられる人間関係などが続くと、顆粒球が増えやすくなります。その結果、体のどこかで慢性的な炎症が起きやすくなり、胃潰瘍や高血圧、心筋梗塞といった病気につながりやすくなる。一方で、副交感神経が優位になりすぎると、今度はリンパ球が増え、アレルギー症状や自己免疫疾患などを引き起こしやすくなる――。
福田-安保理論は、このように「ストレスと自律神経のアンバランスが、白血球のアンバランスを招き病気のかたちを変えていく」という、わかりやすい全体像を示してくれます。
本連載では、福田ー安保理論の内容を、医学や東洋医療の専門用語に偏りすぎない言葉で紹介していきます。「自律神経と免疫」「冷えと血流」「がんとストレス」「日常生活でできるセルフケア」など、読者のみなさんが日々の暮らしを振り返りながら読めるテーマを中心に取り上げます。
同時に、安保先生の研究がどのような背景から生まれ、どのように臨床経験と向き合いながら深められていったのかも、大内先生の視点を通してお伝えしていきます。
健康情報があふれる時代だからこそ、「何を信じ、どう実行するか」が問われています。福田ー安保理論は、すべての病気をひとつの理論で説明する「万能の答え」ではありません。しかし、「体は本来、自分で治ろうとする力を持っている」「その力を引き出す鍵は、生活のリズムと心の持ち方にある」というメッセージは、多くの方にとってひとつの指針になるはずです。次回からは、この理論の中心となる「自律神経と白血球の関係」を、もう少し詳しく見ていきましょう。

大内晃一
1995年、東京理科大学卒業。その後、ゼネコンを経て東京医療福祉専門学校で鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師の資格を取得。新潟大学大学院医歯学総合研究科地域疾病制御医学専攻修了、博士(医学)。現在、東京医療福祉専門学校鍼灸マッサージ教員養成科長。
(文 高橋利直 協力 内野孝明)

