丸山弘志さんは、阪神淡路大震災で被災し、「助けられる側」となった経験から、東日本大震災が起きた時、すぐに被災者支援へ向かいました。著書『東日本大震災 神戸からの恩返し』に書かれた「中学生への問い」は、災害を1つの出来事として終わらせず、自分ならどう感じ、どう動くかを考えるための入口です。

震災の記憶を、「問い」に変えて後世に手渡す
丸山さんがこの本を書いた背景には、幼いころ祖母から何度も聞いた戦争体験がありました。当時は、防空壕に入るのが当然とされていたのですが、防空壕に入らなかったことで命が助かったという祖母の体験談は、小学生だった丸山さんの心に強く残りました。身近な人から聞く話に、とっさの判断が人の生死を分けることもあると気づかされました。今、東日本大震災から十五年が経ち、震災後に生まれた中学生には当時の記憶がありません。だからこそ、震災を経験した一人として、体験を語り継ぐ必要があると考えたのです。
さらに大きなきっかけは、娘が小学校四年生の時、出張授業を頼まれ阪神淡路大震災の経験を話したことでした。写真や映像、クイズを交えながら問いかけると、子どもたちは真剣に受け止め、自分のこととして考え始めました。その体験から、子どもたちには一方的に教えるより、問いかけながら対話することが大切だと実感しました。丸山さんにとって「問い」は、記憶を手渡すための方法であり、子どもたちが自分の内側で考え始めるための扉でした。
災害の記憶を、日常の行動へつなぐ
本書の特徴は、各章の終わりに「中学生への問い」と「章末まとめ」が書かれていることです。たとえば第一章では、「突然、家や町が壊れたら、あなたはどう感じるだろうか」「助けられる側になることと、弱いことだろうか」「遠くで災害が起きたら、自分に何ができると思うか」と問いかけています。
丸山さんは、これを防災の知識として覚えるだけでなく、自分が同じ場にいたらどうするかを考える教材にしたいと話します。第二章の問いでは、「助ける気持ちだけで、人を救えるだろうか」「クラスで困っている人がいたら、どうしたらよいだろうか」と、震災の話を日常へ引き寄せています。
支援は善意だけでは続かず、情報を共有し、継続的な支援の流れをつくることが必要です。困っている人に気づき、手を差し伸べるとはどういうことかを考える。災害という非日常を素材にしながら、いじめや孤立、クラスでの助け合いにもつながる問いとして、学校や家庭で使ってほしいという思いが込められています。

著者 丸山弘志
1961年生まれ、神戸出身。阪神淡路大震災で被災し、東日本大震災では米沢市を拠点に支援活動を行う。
共 著に「市民の力で東北復興(ほんの木)」

1995年の阪神淡路大震災。私は神戸で被災し、全国から多くの支援を受けました。そして2011年。今度は自分が東北へ向かう番でした。山形県米沢市での被災者支援。吹雪の駅、静まり返った体育館、足湯の湯気の向こうで語られる言葉。そこにあったのは「助ける人」と「助けられる人」を越えた人と人のつながりでした。本書は、震災支援の現場で感じたことを中学生に伝わる言葉でまとめた記録です。災害はいつ、どこで起きるか分かりません。「想像力」と「行動」のメッセージ。震災を経験した一人の人間から、次の世代へ届けたい小さな記録です。(本書より)
「中学生におくる 東日本大震災 神戸からの恩返し: 阪神淡路大震災の被災者が 東日本大震災で感じたこと」
丸山弘志 著
10.49 x 0.38 x 17.3 cm 62ページ
1,100円(税込)
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