第6話 サークル対話はどう進める? サークル対話は何のため?(リーン・ファンデンヒューヴェル)

写真:リヒテルズ直子

 イエナプランスクールの学校生活は、まず、みんながしっかり顔を合わせてお互いに挨拶するところから始まります。ちゃんと意識してお互いに顔を合わせ、お互いに対して注意を向け合うことで、みんなでうまく1日のスタートを切れるようになるのです。
 また、放課(授業が終わって帰宅する)の前にも、またサークル対話を開いて、みんながお互いの顔を見て、その日を振り返り、必要に応じて話し合えるようにしています。
 このように初めと終わりにサークル対話をすることは、毎日の学校での習慣になっています。
 サークル対話でこうしてお互いが顔を合わせることによって、子どもたちは自分のグループに対して帰属感を持つようになります。それを通して、グループは集団としての結束感を高めていきます。

 1日の初めと終わりに行われるサークル対話は、イエナプランスクールの特徴でもあります。
 いつもこうして、サークルを作って座っている子どもたちと一緒に毎日が始まるのです。どの子も皆、他のすべての子どもの顔を見ることができ、何か大切なことを直接その子に向かって話せます。
 幼児グループ(4−6歳)では、日々起きていることが話題になります。

「新しい靴を買ってもらった」
「昨日の夜、歯が抜けたよ」
「昨日自転車で転んで今、絆創膏を貼ってるんだよ」
「私のおばあちゃんは今、病気なの」
「うちの猫が子猫を産んだんだよ」と言ったようなことです。

 私たちにとっては、ごく当たり前の日々起きるなんでもないことのように見えることが、小さな子どもたちにとっては、とても重要なことであることがよくあります。子どもたちにとって大切な、こういうことについて話をするとき、子どもたちは、お互いについて理解を深めたり、またお互いと共に何か新しいことを学んだりします。
 こうした対話は、実際にどう進行していくのかを予想できないので、前もって計画を立てられるものではなく、実際に対話を始めてみて、それから意外な展開になることもあります。
 ファミリーグループのリーダーたちには、サークル対話では何らかのリードをするように言いますが、その際できるだけ多くの話が、子どもたちの方から出てくるようにし、「グループリーダーは教育学的立場から全体を動かしていくように気をつけること」と話します。つまり、グループリーダーは、子どもたちのサークル対話をリードする際に、何らかの正しい教育学的基盤をもって判断しながらリードしていかなければならないのです。

 子どもたちの発言のうち、「どんな内容、どんな場合にはもっと深く掘り下げて展開した方がよいのか」また、「どんな発言に対しては、その時の発言だけに留めておけばよいか」という判断をするためです。

 幼児のグループリーダーの場合は、もちろん自分でテーマを提供することもあります。そういう時には、誰もが発言できるようなオープンなテーマで、子どもたちの思考を活性化させるような問いを提示して、子どもたちが深くよく考え、その対話に参加しようという気持ちになるように刺激をします。
 どんな対話の場合にも、いつも何かを言って参加しようとする子もいれば、なかなか自分の意見を他の子に聞かせようとしない子もいるものです。発言をなかなかしない子どもたちに対しては、事前に、次回はどんなテーマで話をするのか、次回のサークル対話では、まず初めにそのテーマについて、みんなが考えていることを順番で話してもらうよ、と伝えておくとよいでしょう。
 それでも、どうしてもサークルの中であえて発言を(まだ)しようとしない子、話したくない子もいるものです。そういう子たちに対しては、ここで、それ以上の強制はしません。こういう子どもたちとは、機会があるたびに個別に対話をする機会を多く設けるようにします。
 サークル対話が段々うまく運ぶようになってくると、子どもたちは、ごく自然に、サークル対話をすることを習慣と考えるようになり、次第に、より自分らしい態度でサークルの場にいられるようになり、サークル対話をリードすることもできるようになります。そういう変化を遂げていった素晴らしい例を、私は、5歳児に見出した経験があります。

 サークル対話には、こういうやり方もあります。

 2重円を作り、内側のサークルの子どもたちを外側のサークルの子どもたちと向かい合わせにします。そして、向かい合わせの子ども同士2人ずつで何かについて対話するのです。数分後に、内側のサークルの子どもたちだけが、ひとつずつ同じ方向に横にずれて、新たにもう1人の新しいパートナーと向かい合わせになって話をします。
 あるいは、3、4人ずつの小さなグループに分けて10分間ほどそこで話し合わせることもできます。その後で、もう一度全員一緒の大きなサークルになり、そこで、各グループで話し合われたことを短く報告するようにするというやり方です。

 子どもたちの年齢が上に進めば進むほど、より多く他の対話を進められるようになります。

 大抵は、グループリーダー自身がテーマを決めて持ってきたり、子どもたちが自分でテーマを持ってきたりします。ここで皆がいつも心に留めておかなければならないのは、サークル対話の中では、どの人も皆平等だということです。
 つまり、誰が持ってきたテーマに対しても、同じように尊重しなければなりません。また、サークル対話の場を、自分1人が長々と喋り続ける場にしてしまうという過ちは誰も犯さないようにしておかなければなりません。

 年長の子どもたちの場合には、サークル対話にも様々の種類があります。

「観察サークル」では、みんなで一緒に何かをよく見て観察します。普段から見慣れている何でもない当たり前のものを、みんなで一緒によく見て、そこで自分が見つけたもの、感じたこと、目立つことなどを言葉にして、考えを交換し合います。ゆっくり時間をかけ観察している対象物について、ゆっくり時間をかけて一緒に問いを出し合うのです。不思議だなあ、わからないなあ、という感情をお互いに共有するのです。

「作文サークル」では、子どもたちが、自分で書いた文章をみんなの前で読み、お互いに、お互いが書いた文章をもっとよくするにはどうしたらよいかを話し合います。

「読みのサークル」では、1人の子が、自分が面白い、興味深いと思った本の一節を朗読します。その本の内容についても話します。本や詩に対する尊重心を養い、同時に、他の子も読みたくなるようにそれぞれの子が感じた自分の感動を伝えるためです。

「テーマサークル」では、グループリーダーまたは子ども(たち)自身が話し合いのテーマを提示し、それについて、お互いに考えたり、話したり、議論をしたりします。

「報告サークル」は、子どもが、何か自分がした探究についての報告をするためのサークルです。

「時事サークル」では、学校の周囲の地域や国や世界で起きたニュースについて話し合います。子どもたちは、たくさんのニュースの中からどれか一つを選んで自分でそれについて話し合うための準備をします。そのニュースについての自分(たち)の意見を提示して、サークル対話の中で他の子どもたちと共に議論を深めることもできます。

「哲学サークル」では、何らかの哲学的な問いをもとに話し合います。このようにしてお互いに哲学的な思考をすることで、何らかの考えに至ったり、自分や他の人の考え方を学ぶ機会となります。

「評価サークル」は、何か起きたことに対してみんなで一緒に振り返る時間です。例えば、みんなが協力して仕事に取り組めたか、とか、ブロックアワーはうまく進んだか、というようなことを振り返ってみんなで評価するのです。1週間の授業の終わりに、その週を振り返ることもできますし、そこで、うまくいったことやもっとうまくできそうなことについて話し合うこともできます。特に、自分たちはそこで何を学んだのか、どうすればもっとうまくやれるようになるかというようなことを話し合います。

 サークル対話では、とてもたくさんのことを話し合います。正しい方法で対話を進めることに成功すれば、子どもたちはお互いにもっとよくお互いを尊重し合えるようになりますし、お互いについて、また、お互いの背景についてもより多くのことを学ぶようになります。
 こうしながら、様々に異なる多様な文化について尊重することを学び、どうすれば、人々がお互いに気持ちよく平和に関わり合えるかについても考え、学べるようになります。また、他の人との関係の中で「自分の権利」は何かを学ぶようにもなります。つまり、お互いに対して、節度ある形で関わり合うとはどういうことなのかを学ぶ機会になるのです。(続く)

イエナプラン 共に生きることを学ぶ学校
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共に生きることを学ぶ学校」

 

 

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イエナプラン 共に生きることを学ぶ学校

フレーク・フェルトハウズ、 ヒュバート・ウィンタース 著 リヒテルズ 直子 訳

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