第16話 保育所×児童発達支援事業所(併設園)における4つの基本活動(リレーエッセイ)

〜作業療法士×イエナプラン教育専門教員の働き〜

作業療法士とは

 みなさん、はじめまして。作業療法士の “のすけ” っていいます。
 突然ですが、みなさんは “作業療法士” をご存知でしょうか。えっ?待って。イエナプランの話じゃないの!? 投稿の場所間違えてない? てか、作業療法士って何? そう思っている方もいらっしゃるかもしれません。

 今回、教育関係者でない作業療法士の私が、なぜイエナプラン教育専門教員を取得したのか、作業療法とイエナプランに何か関係があるのか、などをお話ししたいと思います。

 私は子どもの頃から小学校の先生に憧れ、教員を目指していました。高校時代には日本や海外の教育について調べ、モンテッソーリやドルトン、イエナプランなどを知りました。しかし、受験シーズンに入った私は急遽、教員から方向転換し、タイトルにもありますように”作業療法士”を目指すことにしました。

 作業療法士とは心と体のリハビリテーションの専門家とも言われ、病院に属していることが多く、食事や入浴、料理など、日常生活に必要な応用的動作の訓練を行うほか、社会参加・復帰を目的とした精神面のケアなどを行います。病院のほかには福祉施設や特別支援学校、地域でコミュニティをつくっている作業療法士もいるなど様々な分野で幅広く活躍しています。日本はまだなのですが、アメリカでは小学校に作業療法士が在籍していたりもします。

 私が教員ではなく作業療法士を目指したひとつの理由は、子どもの分野もあることを知り、発達に気がかりのある子どもたちの発達や心身にサポートできることにとても魅力を感じたからです。作業療法の大学に通い、国家試験に合格してからは支援学校や支援級に通っている子どもたちが放課後に過ごす場所、放課後等デイサービス(以下、放デイ)に就職しました。そこでの経験を積んでからは、児童発達支援事業所(以下、児発)と保育所(定員60名超)が併設している事業所(以下、併設園)で管理者として働いています。

 児発は、主に就学前の子どもたち(0〜6歳)が対象で、発達に気がかりのある子どもたちが支援を受ける場所です。支援プログラムは各事業所によって異なりますが個別支援やグループ支援など様々であり、学習や運動に力を入れている事業所もあります。私が働いているところでは異年齢保育やインクルージョン、ホンモノの経験を前提に個別支援やグループ支援を行っており、そして併設園であるため児発に通っている子どもたちは保育園の子どもたちとも関わり、 “遊び” を通して、運動機能、認知能力(学力、記憶力など)、非認知能力(意欲、協調性、自制心とやり抜く力、自己肯定感など)などにアプローチしています。他には保護者に対して就学に関する情報提供、就学先への接続、子どもたちが通っている保育園や幼稚園等との連携をも行います。

HPを見てオランダ研修へ

 そんなところで働いている時に、私はたまたま、日本イエナプラン教育協会のHPを見ていました。そこで2回目の長期のイエナプラン研修の案内を見つけ、とてつもなく行きたいという気持ちが込み上げ、すぐに協会へ問い合わせたのを覚えています。教員でもない作業療法士が参加することができるのかだめもとの連絡ではありましたが、数日後に参加可の返答をいただけました。急いで会社に相談し、休職をすることでオランダに行く機会を得ました。

 正直なところ、このオランダでの研修が初海外でした。英語もオランダ語もまったくです。(行っちゃえばなんとかなりますね!)研修が始まってからは、このイエナプラン教育を作業療法や併設園にどのように活かすことができるのか。育って欲しい子どもたちの姿はどういった姿なのか。これから日本の教育や福祉を変えていくことができるのか。これらの問いを追い続けてきました。
 現地では講義やイエナプランスクールに通い、イエナプランの基礎から実践まで様々な経験を得ることができました。

イエナプランの4つの基本活動

 その中で私はこの研修期間、そして帰国してからもイエナプランの4つの基本活動を主に併設園でも展開できるのかを考えました。

対話‥これまでは話を聞く時、先生の周りに集まって先生を見て話を聞く、もしくは話すことが多かったと思う。このスタイルをサークル対話にすることで子ども主体の環境を作ることができ、子どもたちの対話を活発にすることができるのではないか。

遊び‥室内遊びや戸外遊び、これらはそのままだろう。子どもたちの遊びを深められる環境構成は、保育業界ではゾーン保育やコーナー遊びなどといわれるが、子どもが遊びを通して、そうぞうしたり、身体を動かしたりと様々な経験を得ることができる。環境構成のほかには、遊びの種類の引き出しを多く持っていることも重要だと思う。子どもの発達や個性、一人ひとりに合わせた遊びや環境が必要だからだ。

仕事(学習)‥未就学の、ましてや発達も一人ひとり違う子どもたちが、同じ学習から同じ知識を身につけることは難しいと思う。子どもたちは生活や遊びを通して多くの体験や経験をし、日頃から「これは何?」「なんで?」「やってみたい」と言葉にしている。ここで大人が答えを教えるのではなく、図鑑を開いて確かめたり、実験などを行なってみたりと、子どもたちから出てくる問いに対して一緒になって考えることが子どもたちのそうぞう力を深めることになるのだ。読み書きや計算など直接的な学習でなくても、様々な経験を積み重ね、「やってみたい」という気持ちや自己肯定感を高めること、そうぞうすることが今後の仕事(学習)に繋がると思う。

催し‥年間を通してみると運動会やお遊戯会、生活発表会などがある。ここで子どもたちの表現を引き出すのも良いだろう。しかし、特別な行事以外にも日頃から子どもたちの表現を引きだす行事や活動は必要かもしれない。

併設園での展開

 この4つの基本活動は併設園でもリズミカルに循環させることが可能だと思います。しかし、支援プログラムや時間、子どもの様子や生活場面によって限られてしまう場合もあります。大人は子どもたちの何を引き出したいのか、どんな経験をさせたいのか、ねらいを決めることが重要であり、ねらいを達成するために一つひとつの活動を丁寧に行なっても良いかもしれません。

 これらの基本活動によって、子ども一人ひとりの個性や成長を伸ばし、人との関わりを大切にし、支え合うことを学び、一人ひとり異なる考えや価値観があることを認め合えるようになる。そんな経験の積み重ね多様性を受け入れた社会の発展に繋がるのではないかと考えます。就学前のこの幼児期に基本活動を経験しておくことはとても重要です。

 今、私が働いている併設園でも異年齢保育、インクルーシブ保育を大切にしています。会社の保育理念や方針もある中でイエナプランの大切にしていることを保育や支援に取り入れていくのは、子どもたちが様々な経験を積みながら、少しでも「やってみたい」という気持ちを持ち、子どもたちの将来の可能性が広がればと願っているからです。
 そして、今の私たちの取り組みが、いずれは日本の保育や支援、その後の教育の質の向上に繋がることを信じています。(のすけ)

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