第4話 もし私が新学年で先生のクラスに入ったら、お願い、、 、


学年末のクラス編成

 オランダでは7−8月は夏季休暇。学校は6週間休みになる。

 休暇が始まる前の学年末、私たち学校の職員は、休暇後に始まる新学年のグループをどう編成したらよいかと忙しい日々を送る。幼児グループの年長の子たちは、中学年グループに、中学年グループの年長の子たちは、高学年グループへと進学する。中学年グループも高学年グループも複数あるし、それぞれのグループには、そのグループのグループリーダーがいる。どのグループリーダーも素晴らしい点と同時に苦手なところも持っている。

 そしてもちろん、子どもにも保護者にも、それぞれ自分たちの要望がある。学校は子どもたちの要望に耳を傾ける。子どもたちは、どのグループに行きたいか、その理由は何なのかを言ってよいことになっているし、どの友達と同じグループになりたいかも言える。だから、新学年のグループ編成はなかなか難しく、まるで、たくさんのピースがあるパズルを組み合わせていくような仕事になるのだ。学校として、職員たちは、全ての願望とそれを理由づけている根拠に耳を傾けることにしているが、誰もの全ての願望を叶えることは無理なので、文書にした説得力のある根拠に対してだけ本当に考慮するよと約束している。

 可能な時には誰もが満足できるように努めはするが、学校は、バランスの取れたグループを作ることにも責任がある。もちろん、決めた結果について、私たちも、子どもたちと保護者にどういう理由でそうしたのかを説明する。

 パズルを敷き詰めるのが終わり、新学年のグループ編成が決まったら、夏休みに入る前に、そのグループがどんなグループかを3回(3日間)体験することになっている。それを「新しいグループになれる日」と私たちは呼んでいる。子どもたちにとっても、保護者たちにとっても、ちょっとワクワクするような不安なような感じだが、それはグループリーダーたちにとっても同じで、新しい状況で子どもたちは一体どんなふうに行動するのだろうと試してみるよい機会になる。新しいグループ編成でグループの年長になった子どもたちは、そのグループではどんなふうに物事が動いていくのかを新しく入ってきた子どもたちに教えようとするし、これまでグループの中で年少だった子どもたちは、今度は年中となり、自分たちが少し重要な立場になったように感じ始めるものだ。この子たちも、新しく入ってきた子どもたちに対して、そのグループではどんなふうに物事が進められるのか、このグループのグループーダーはどんな人なのか、グループの秘密、グループリーダーの秘密についての情報が子どもたちの間で飛び交う。

エレケのお願い

 新しいグループ編成に慣れるための最初の日が終わった時に、エレケという女の子が私のところにやってきた。エレケは、私がグループリーダーをしている高学年グループに入れたのを喜んでいると言ったが、でも、「お願いもある」という。中学年グループの時、エレケは、国語の追加レッスンを受けるために、時々グループの外に連れて行かれていたのだそうだ。学校には「追加支援教師」と言って、学習困難児を助ける教師が配置されている。追加教師の仕事は、子どもたちの遅れを取り戻すために支援するという、もちろん、良かれとの配慮から来ていることに間違いない。

 けれどもエレケは教室から連れ出される度に、いつも特別の眼差しが彼女に向けられるのが嫌だった。エレケは、「どうか、追加勉強のためにグループの教室から連れ出すのはやめてくれないか、とにかく、一生懸命努力して勉強するから、それだけはやめてほしい」と私に言った。

 学校が子どもたちに追加指導をすることについて、エレケは、エレケを助けようとする学校の意図に反して別のことを感じていたのだ。「毎回私が教室から出て行かなければいけないのをみて、みんな私が馬鹿だと思っている」というのだった。

一人ひとりはみんなのために、みんなは一人ひとりのために

 もちろん、グループリーダーとして、私は、エレケのために最善を尽くしたかった。そこで、私たちは、初めて国語を学ぶ時間が来た時に、グループの子どもたちに対してこのことを相談してみた。もちろん、みんな、エレケが国語があまり得意でないことは知っていたけれど、他の子だって、算数があまり得意でなかったり、絵を描くのが下手だと感じていたり、サッカーが苦手だったりする、、、。

 グループの子どもたちには、すでに解決案があった。「それなら、エレケは、誰か、国語が得意で、しかも説明するのも上手な子と一緒に仕事をすればいいんじゃないか」ということになったのだ。私は、グループの子どもたちとともに、何かを苦手だと感じている子に対して、どうすればお互い同士で助けてあげられるだろうということについて、とても清々しいサークル対話をすることができた。そして、仕事の時間の初めには、いつも「誰か手伝いが欲しい人はいるかい」と聞くことにしよう、それはごく当たり前のことだ、と約束しあった。

 どの子も皆、グループのためにいるのだ。そして、グループは一人ひとりの子のためにある。共に学ぶ、つまりお互いから学び、お互いに対して教えるのだ。

 こういうことは、子どもたちと共にサークルを使ってそれについて話をすれば、ごく当たり前のように子どもたちの方から提案してくるし、すんなりできることなのだ。(続く)

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フレーク・フェルトハウズ、 ヒュバート・ウィンタース 著 リヒテルズ 直子 訳

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