第8話 イエナプラン教育でのグループづくり(リーン・ファンデンヒューヴェル)

 イエナプラン教育の外から見て最も目立つ特徴は、まず何よりも、ファミリーグループという異年齢グループがあることだろう。
 ペーター・ペーターセンが目指していたのは、人間の学校だった。子どもたちが共に生きることを学ぶ学校だ。そして、共に生きることを学ぶというのは、一緒に仕事をし、一緒に遊び、一緒に話し、一緒に行事を行うことを通して、ごく自然な形で実践できる。それは、年齢が異なる子どもたちのグループを作ることによって、より良い形で行うことができるのだ。よく考えてみると、異なる年齢の子どもたちが一緒にいるという状況は、とても当たり前で自然な姿でもある。「普通の社会生活」において、人はいつも異なる年齢の人と共に暮らしている。ペーターセンは、異年齢集団の例として、家庭生活を挙げていた。公園や広場などでたまたま出会った者同士で遊んでいる子どもたちを見てみても、同じ年齢の子どもだけで遊んでいることは滅多にない。年齢や、経験の内容や量、発達の度合いの違いがあるからこそ、子どもたちは、お互いのことを見たり、お互いに耳を傾け合ったり、真似をし合ったりしながら学んでいる。

 ファミリーグループ(異年齢学級)がよく考えて組織されている時には、こうした学び合いのプロセスが常に起きているのを見ることが出来る。一つのファミリーグループの中に、異なる年齢の子どもたちがおり、極めて自然な形で一緒に、また、お互いから学んでいる姿が見られるのだ。三学年の異なる年齢の子どもたちがいる教室では、一番年齢が若い子たち、それから、年齢が真ん中の子たち、そして最も年上の子達たちがいる。子どもたちにとって、これらの役割を交替して経験することには意義がある。立場の違いを経験しながら、子どもたちは、助けを求めたり与えたりすることを経験できるからだ。毎年、グループの中の三分の一の子どもたちが入れ替わり、グループの文化が継続される。最も年上の立場になった子どもたちは新たに入ってきた年下の子どもたちを助け、その子たちに良い模範を示さなければならない。真の意味で良い見本を、だ。これは、教員が異年齢学級を現場で実践する時に、特に気をつけておかなければならない点だ。

 ファミリーグループのリーダー(担任教員)は、自分が受け持っているファミリーグループの文化の形成のために重要な役割を果たす。グループリーダーは、教育の専門家として、何らかの決定をしなければならない時には、常に深く考えてその決定をすべきだ。そうした決定は、必ずしもいつも自然に簡単にできることではない。しかし、だからと言って、何か問題が起きるたびに、従来型の伝統的な学校の習わしに沿って古い型の教員に戻ってしまうのでは情けない。

 幸い、そうならないようにする方法はいくつもある。まずは、新しい学年度が始まる最初の日から、自分自身は専門職者なのだという自覚を持っておくことが重要だ。そして、自分が受け持っている子どもたちのグループが、本当にグループとして機能できるように仕向けて行くのである。子どもたちのグループをグループらしいものにしていくには、何週間かの時間をかけることが求められる。オランダでは、この年度はじめの最初の期間を「金の週間」と呼んでいる。この最初の何週間かの間に、このことにしっかりと注意を払い、集団力学(※子どもたちの関係性や集団としての動き)をうまく把握しマネジメントできれば、やがては、グループの子どもたちも、グループリーダーである自分自身も、学年の残りの時間をずっとうまく過ごすことができるようになるからだ。子どもたちは、集団としてうまくみんなの力を活かしてみんなで一緒に力を発揮できるようになるだろう。そうすれば、どの子も皆、それぞれ、集団の中での自分の役割を自覚して安心して過ごすことができるようになる。また、グループリーダーは、たくさんのことを自分が指示してやらせるのではなく、子どもたちだけで自立的にやっていけることを、外から楽しみながら過ごせるようになるはずだ。

 だから、「金の週間」と呼ばれる最初の数週間には、主として集団力学に向けられた活動を行う。できるだけ気持ち良いグループを作ろうと心がけると良い。この最初の時期に、しっかりとグループ作りに取り組み、社会的な安心感を生み出すように時間とエネルギーとをかけておけば、後になって、認知的能力(学力)でも高い成果が得られることを知ることになるはずだ。グループ作りがうまくできており、皆が安心感を持って教室に居られれば、子どもたちは落ち着いて静かに学習に取り組むし、質問がある時には遠慮せずに率直に問いかけられるようになるし、お互いに助け合うようにもなる。そしてこういう雰囲気ができていれば、子どもたちは学業においても最大限の成績をあげられる。

最初の何週間かの間に取るべきステップを簡単にまとめると、

1)子どもたちがお互いを本当によく知り合えるようにすること
 これを短い遊びを通して、あるいは、子どもたちが自分のバックグラウンド(自分の親、兄弟のことなど)、趣味、好きな動物、感動した本などについてお互いに伝え合う短い対話を通してやるとよい。
 1週間か2週間の間、こういうことにたくさんの時間(1日に数回、10−15分ずつの時間)を割くようにする。
 この活動はさっと短い時間で(!)やり、その後必ず、グループ全体でお互いに話し合う時間を設けるようにする。
 どうすればもっとお互いを知り合えるようになるだろう、お互いをもっとよく理解できるようになるだろう、と子どもたちに考えさせるようにする。お互いに対する尊重心は、お互いを理解し合うことを通して生まれるものだからだ。この段階では、教員である自分自身もすべての子ども一人ひとりに関心を持ち、自分自身のことについても子どもたちに伝えるようにする。

2)続いて、対話の練習や遊びの形式を使いながら、このグループの中でどの子もみんな気持ちよく過ごすためにはどんな<約束事>が必要だろうか、と頻繁にグループの子どもたち全員と対話をする。こうした対話の機会を重ねたのち、みんなでいくつかの<約束事>を決め、それを言葉にして表し、実行に移す。<約束事>の項目数はあまり多くない方がいい。多くても8つぐらいまでの約束事であれば、子どもたちは理解できるし守ることができる。約束事は、ポジティブな表現を使って示すこと、つまり、「・・・は是非やろう」という表現にすること。「・・・しないこと」とか、「・・・はダメ」といった表現は避けるべきだ。このために何回か話し合いを重ね、その結果を約束事としてまとめるまでには、最低2、3週間の時間は必要だ。だから毎日、短い時間を設けて約束事について話し合うようにする。その間も、子どもたちがお互いに知り合えるようになるための対話や遊びを続ける。

3)もちろん、時には、望ましくないことが起きたり、コンフリクト(対立)が生じることもあるだろう。それは、ごく当たり前のことだ。いけないことではなく、いろいろと考えの違う人がいれば対立や意見の食い違いが起きるのは当然なのだ。気を付けておかなければならないのは、教員である自分自身がそうしたことに対してどう反応するかということだ。なぜなら、教員の反応の仕方は、場合によって、子どもたちに深刻なほど大きな影響を与えるものだからだ。だから、何か良くないことが起きたり対立が起きた時には、教員は、静かに落ち着いて応じ、感情的な反応をしないように注意しなければならない。それまでの話し合いを通してみんなで導きだしたお互いの<約束事>は何だっただろうか、と子どもたちに思い出させ、誰にとっても気持ちの良いグループにみんなでしていきたいということを伝えるようにする。そして、この目的のために、どの子も皆責任を持って関わることが大切なのだと伝える。

 問題や対立が起きた時に、原因は何かといろいろと探ってみたり、誰かに「責任を負わせる」などするのは、事態を必要以上に深刻にしてしまうだけだから、そうしないように。何かがうまく行かなかったのならば、なぜうまくいかないのか、問題は何なのかを指摘し、そういう問題が将来起きないようにするには「私たちには何ができるのだろう」と子どもたちと話し合うようにする。

 こういう活動をすることによって、「金の週間」を意図して自覚的に進めることができる。また、こうしておけば、やがては、子どもたちが、よりよく、より静かに学習できるようになることに気づくはずだ。子どもたちは、お互いに対してよりうまく関わり合えるようになるし、それぞれが持っている可能性を最大限に発揮できるようになる。

 教員には、こうして、真に子ども学を学んだ専門家として、自分のグループの子どもたちを導きコーチしていけるようになってほしい。(続く)

イエナプラン 共に生きることを学ぶ学校
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イエナプラン 共に生きることを学ぶ学校

フレーク・フェルトハウズ、 ヒュバート・ウィンタース 著 リヒテルズ 直子 訳

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