第3話 ワールドオリエンテーション その2

子どもたちの問いを出発点に

答えを与えると思考は止まる

 子どもというものは、生まれつき好奇心に満ちているものだ。子どもは、小さな探求者なのだ。このことは、多くの人が経験したことのあることだと思う。小さい子どもは、たくさんの問いを問いかけ続ける。問いかけ続けることで、子どもたちは世界を発見している。この世界では、本当にとてもたくさんのものが、まだ誰かに発見されなければならない状態でいる。子どもの育ちに関わる者(親として、あるいは、教員として)として、私たちは、こうして問いかけてくる子どもたちを心から楽しむことができるし、同時に、知りたくてたまらない様子でいる子どもたちをなんとか助けたい、答えを教えてやりたいと思うものだ。

 なぜ、こんなにも多くの人が教師になって子どもたちの教育に関わろうとしているかといえば、彼らが、子どもたちに何かを教えたくて仕方がないからでもある。それだけに、子どもたちが持っている問いに答えて子どもたちを助けてやることができると、当たり前だが、いい気分になる。子どもは問いかけ、大人たちがそれに対して出す答えを受け取る。

 でも、ここで注意してほしい。問いかけてきた子どもに、何かが起きるからだ!

 子どもはその時、こういうイメージを持つことになる。そのイメージというのは、すべての問いには必ず答えがあり、その答えは大人たちが教えてくれるもの、というイメージだ。でも、こういう大人たちがいつも正しい答えを与えているかどうか、ちょっと考えてみてはどうだろう! 答えを与えたいばかりに、ときとして、もしかすると全く正しい答えではないかもしれないけど、とりあえず答えておかねば、と考えてしまうことだってあるからだ。実を言うと、大人たちが必ずしも何もかも知っていると言うわけではないし、子どもたちが出してくる問いに、とりあえずこう答えておけばいいと考えることだってある。

 私たち大人が子どもの問いに答えを与えると、子どもは、しばしば、自分で考えるのを止めてしまう。そして、それこそ、大切なチャンスが失われた時に他ならない。

 だから、子どもの育ちに関わっている人に私がアドバイスをいうとするなら、それは、「できるだけ少なく答えを与えること」だ!

不思議に思い続けるように

でも、だとしたら、いったい子どもたちに対して、大人は何をしなければならないのだろう。それは、彼らが、ずっと不思議に思い続けるようにすることだ!

 簡単に答えは与えない、けれども、子どもが問いかけてきたときには、その問いが良い、賢い問いだね、と確認してやる。そして、その子どもの問いにさらに加えて、こちらからもう一つの問いを出して聞き返してみる。そうしているうちに、もしかするともっと別の問いが生まれてくるかもしれない。でも、答えは与えちゃいけない!

 それから、子ども自身に(または子どもと一緒に)、出してきた問いの答えはいったいなんなんだろうね、と考えさせる。どうすれば、本当に答えを見つけ出すことができるだろう、と一緒に考えてみる。そして、その子自身が探求に取り組み始めるように促していく、または、その子と一緒に探求をしていく。その時には、自分自身も不思議でたまらないと感じている様子を子どもに見せることだ、自分自身、全てを知っているわけではない、だから好奇心でいっぱいだという姿を見せる。そして、今でも何か新しいものを発見した時には嬉しくてたまらないんだ、という姿をだ。大人である自分自身が、なんでも知っているわけではないと言うこと、まだまだとても多くのことを学ばなければならないし、学ぶということは本当に楽しいものだということを子どもたちに見せる。

それを学校でやるために

 私たちのしている教育は、よく、まだこれだけのことを学ばなければならないと考えながらやっていることが多い。それは確かに一理ある。なぜなら、子どもたちに大人が伝えておかなければならないことはとてもたくさんあるからだ。カリキュラムも決まっている。多くの場合、私たちは、子どもたちに、インストラクションを通して知識を与え、それからそれがちゃんと子どもたちに伝わるように教材を使って説明したり練習させたりする。それが終わると、テストをして確かめ、子どもたちを点数で評価する。テストで良い点が取れるように訓練することだってある!

 子どもたちを訓練して鍛える「トレーナー」になることもは時には必要な事かもしれない。授業の形にして、子どもたちが何かを学び取るように、インストラクションも与えなければならないだろう。

 しかし、子どもたちがよく学べるように、コーチの役割を果たせるなら、そのほうがもっといい。教師が、子どもたちに問い(返し)かけて、次にはどんななステップを取ればいいだろうと考えさせる、いわばガイダンスの役を果たしながら、子どもたち自身が、本当に自分たちだけで仕事に取り組み、物事を探究していけるならそのほうがずっと素晴らしい。

 これを学校でうまくやっていくためには、次のステップを踏むといい。

(1)刺激を与える

 子どもたち自身で、突然、何かのテーマに興味を持ったり、それについてもっと知りたいと思うことはよくある。例えば、自分たちの周りや世界で、何か予想していなかったことや大きな出来事があったとき、あるいは、子どもたちが、何かに驚かされた時などだ。例として、巣から小さな鳥が落ちてきた時、晴天の空から突然大きな雹が降ってきた時、火山が爆発した時、嵐が来て自動車の上に木が倒れてしまった時、オリンピックが開催された時、新しい自転車を買ってもらった時、弟や妹が生まれた時、おじいちゃんが亡くなった時、そして、コロナが蔓延した時などが挙げられる。

 教師であるあなたも、何かの自分の方から子どもたちに刺激を与えることができる。子どもたちに何か特定のテーマについて教えたい時というものがあるからだ。健康生活について教えたかったら、教室のテーブルの上に聴診器を置いてみるといい。または、教室に、お医者さんが着る白衣を着て入ってきてはどうだろう。交通についてのテーマだったら、教室のなかに道路標識をいくつか置いておくこともできる。警察官の帽子をかぶって教室に来てみてはどうだろう。自動車のハンドルを持ってきたら…。

考えてみたら方法はいくらでも見つかる! 大事なのは、子どもたちが、なんだろうと不思議に思い、そのことについて話したくてたまらないという気持ちになるようにすることだ。子どもたちの考えをこそ、みんなが聞けるようにすることだ。

話をちょっとずつ進めながら、ワクワクするような気持ちを少しずつ積み上げておくのだ。

(2)対話と問い集め

 子どもたちとの会話に入り、子どもたちが何を考えているのか、そのテーマについて既に知っていることは何かを、言葉にして話させる。できればマインドマップを作るといい。子どもたちに問いを出させるのだ。一つの問いはさらにもう一つの問いを呼ぶ。教師であるあなたは、そこで出てくる問いを書いていく。どの問いも一枚ずつの小さなカードに書き留めるといい。教師である自分も何か問いを出して、それもカードに書いておく。すべての問いが、誰の目にも見えるように教室の壁にカードを張り出しておこう。

(3)さあ、本番

 すべての問いが出尽くしたら、今度は、どうやってその後の仕事を進めるかを決めなくてはいけない。まず、子どもたち自身で答えを見つけられる問いはどれかを考えよう。それを、子どもたちが一人一人で別々にやるのか、2、3人ずつ一緒にやるのか、または、自分も加わってクラス全体で取り組むのか、も決める。

子どもたちが探究するために必要な道具や材料を用意しよう。子どもたちは、自分で、誰かのところに行ったり、専門家に電話をかけたりしてインタビューをして情報を集めることもできる。

 問いの書かれたカードを子どもたちの間で分担し、そこに書かれた問いの答えを探すために仕事を始める。

 この時に、教師は、コーチとなりガイダンス役となる。子どもたちが、ちゃんと自分が答えを見つけるべき問いに向かって仕事をしているかどうか、気をつけるようにしよう。このプロセスをうまく進められるように子どもたちを助け、子どもたちが集めている答えが正しいものであるように注意する。子どもたちは、ある問いへの答えを見つけたら、また、新しいカードをもらって、もう一つ別の問いのために探求を始める。

(4)発表する

 ある子どもか、小さいグループの子どもたちが、答えを見つけたら、今度は、その答えを見つけた過程について、他の子どもたちに発表するための準備に取りかかる。ここでの発表は、写真など目に見える材料を使ったり、グラフで何かを表すなどして、わかりやすい良い形で行われなければならない。大きな絵にしたりポスターにしてみるのもいいだろう。どんな形式でもかまわないが、子どもたちが、そこで、それぞれ自分の才能を活かせるようにするといい。

 ほかの子どもたちが、誰かの発表を聞いて、その問いの答えを理解できたなら、そこで行われた探求や発表は良いものだったと言える。

(5)保管する

 子どもたちと一緒に、やった探求と自分たちで見つけた答えとを、きれいな(よくまとまった)まとめにしていく。もしかすると、この時にまた新しい問いが生まれるかもしれない。

写真
ここにあげている写真は、「私の体」と言うテーマで中学年グループ(6−9歳児)と探求学習をしたときの様子を示したもの

→ある小さなグループの子どもたちは、角砂糖を使って病院を作った。前もって、どんな病院を作るのかを話し合い、そこには、どんな部屋があるのか、それぞれの部屋では何があっているのかなどを決めた。写真を見るとそれがどんなものだったかわかるだろう。

 グループリーダーが、模型の骸骨を教室に持ってきた(ガイコツの名前はハリー)。たちまちたくさんの問いが始まった。

→これは「質問のドア」(ここを開けると集められたすべての問いがある)

問いの例
・睡眠したまま歩くとどうなる?
・夢ってどうして起きるの?
・どうすれば眠れる?
・ほくろはどうしたらできるの?
・私の爪の端っこの白い部分って何?
・どうして新しい歯ができるの?
・心配ってどうして起きるの?
・ママのお腹の中で赤ちゃんはどんなふうに大きくなるの?

 そうして、「記憶」について探求作業が始まった。子どもたちは、いろいろなことを探し出した。例えば、「男の人は女の人より大きな脳みそを持っているけど、それは、男の人の方が女の人よりも頭がいいと言うわけではない」と言うことも。

→ それから英語の歌を覚えた。「エヴリボディ ハズ ボディ」と。

 次回、私は、このシリーズで、また、5つのステップに戻ってくる予定だ。私の同僚が、「水」と言うテーマで自分のクラスの子どもたちと探求学習をしたときのことを話してくれた。このテーマは、なんと、学校がまだロックダウンでしまっていた時に始まった。でも、本当に、実践的な良い例だったんだ! だからお楽しみに。

注記
問いかけるという姿勢を持つこと、あるいは、そういう姿勢を育てるようにすることは、誰に対しても是非進めたい

 私たちすべてにとって、今この世界に住んでいて、多くの問いを持ち続けることは、本当に意味のあることだと思う。問い続けると言うことは、自分の判断を示すことでもあるからだ。何かについてあまり深く問い続けることをせずに、いろいろなことに対してすぐに自分の意見を持つ人がいる。こう言う人たちに対して、あなた自身が問いかけ、その人のことを簡単に裁断せずに、その人の言う言葉に耳を傾けるようにすると、時には、その人自身が何かを新たに発見して、意見を変えることがある。

 他の人に対してたくさんの問いを問いかけ、その人の言葉に心を開いて耳を傾けることは、世界を今より少しだけ良いものにしていく上で、きっと何かの貢献になることだと思う。(続く)

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フレーク・フェルトハウズ、 ヒュバート・ウィンタース 著 リヒテルズ 直子 訳

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