第14話 楽しく学ぶには(リレーエッセイ)

 「楽しく学ぶには、どうしたらいいんだろう?」私が社会人1年目の小学校教員時代に感じた問いでした。当時私は、30人の小学2年生の学力を保障するために、一斉授業をし、プリントで練習させ、必死な思いで問題を解かせていました。結果は、学年でもテストの点数は高く、保護者の方達にも喜ばれていました。

 しかし、子どもは、どこか辛そうでした。子どもは一生懸命プリントに食らいつき、プリントが終われば次のプリントをこなしています。でも、テストの点数がいくら良くても、どこかしんどそうで辛そうに見えました。

 テストの点数が高いのは良いのですが、子どもの辛そうな姿に、私はいつも悩んでいました。

 本来、学びは楽しいものであるはずです。私は近所の赤ちゃんを預かる機会がありますが、生まれてまだ数ヶ月の子でも、色んな場所に行き、五感を使い、失敗に臆することなく学んでいます。しかし、幼稚園へ、小学校へと歳を重ねていくうちに、あれもこれもと学ばなければいけないものがどんどん増えて、本来楽しいはずの学びが、どこかしなければいけないものに感じられるようになっていくのではないでしょうか。

 どうやったら、本来の楽しかったはずの学びを子どもたちに取り戻すことができるのでしょうか。それを学びたくて、オランダでへイエナプラン教育の研修を受けに行くことにしました。英語も苦手だし、住み慣れない異国の地に滞在することにも少々不安はありましたが、「楽しく学ぶには、どうしたらいいんだろう?」という問いの答えをただただ知りたかったのです。

 オランダのイエナプラン校にいる子どもたちの様子を始初めて見て、涙が込み上げて仕方がありませんでした。なぜなら、学びに向かっている一人一人の子どもが、笑顔で本当に楽しそうだったからです。そして、自分が「先生」だったときのことを思い返しました。私の教室にいた子どもたちが、どの子も辛そうに学んでいた姿を思い返しました。比較できることではないかもしれませんが、学びに向っている子どもの表情のあまりの違いに、自分を責め、涙が止まりませんでした。

 現在は兵庫県の児童ホームで、子どもたちが楽しく学び、学ぶことがやめられない環境作りを模索しています。

 先日、畑体験のときの子どもの一人一人の様子が、とても生き生きとしていて嬉しく思いました。畑体験をしてみて、実体験こそが学びのエンジンになることを改めて実感しました。畑体験の前日、翌日に掘る予定のジャガイモを一個、机の上に置いてみました。横に、植物図鑑も置いておきました。すると、ある子が誰に言われるでもなく自分で植物図鑑を開き、ジャガイモには色々な種類があることを友だちに教えていました。「ジャガイモには、だんしゃくとメークインがあるんだって。明日はジャガイモ堀りじゃなくて、だんしゃく掘りだね!」そんな話をしていました。

 体験こそが、学びをホンモノにする。学校で学んだ読み書き計算を、リアルの体験で活用していって欲しいと願っています。そして、これからも児童ホームを、子どもたちが多様な体験をできる場にしていきたい、と思っています。(キタバ)

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