出版社の本の断裁
会社の片付けをしていて感じたこと(まだ片付け中ですが)

食べ残し、売れ残りや期限が近いなどの理由で、食べられるのに捨てられてしまう食品があることはご存知だと思います。
日本の食品ロス量は年間570万トン(令和元年度推計 農林水産省・環境省)です。
これを1日あたりに換算すると毎日、大型トラック(10トン車)約1,560台分の食品を廃棄していることになります。同様に、出版業界にも「出版ロス」問題があります。
 2020年の日本の新刊書籍発行タイトル(点)数は、年間68,608点(出版科学研究所)です。単純に計算して、一日あたり188点の新刊が出版されています。本は新刊が出ると、書籍専門の卸会社を通して書店へ送品されます。書店では、毎日のように188点の新刊が段ボールで届きます。そして、書店員さんの手によって開封、陳列されます。

 一部の大型書店を除いて書店のバックヤードには、書籍の在庫置き場がほとんどありません。ではそのスペースはどうやって作るかというと、売れない本を出版社に返品して確保するのです。売れなくなった書籍は、返品本として書店から出版社に戻ってきます。
 出版科学研究所のデータによると、年間平均して返品率は書籍が35.7%、雑誌は42.9%です。つまり書籍の場合、10,000冊出版しても3,500冊は返品本で戻ってくるということです。しかしここでの返品ロスは食品ロスとは少し事情が違います。書籍には消費期限がありません。
 つまり、3,500冊は出版社倉庫で改装作業といってカバーや帯を掛け直して良本にして、再度、書店に再出荷されます。ほんの木でも、一冊の本が売れるまで、2回や3回書店との間を行き来する場合があります。
 書店との往来をしている間に汚れたり、需要の見込みが無いと判断した場合は断裁本として廃棄処分にします。断裁本は、古紙として資源リサイクルされ再生紙の原料になります。小社のような小規模出版社ですら、年間の新刊発行部数が数万冊、そして毎年、数千冊の書籍をやむなく断裁しています。
 販売機会の少ない本をバーゲンブックとして安く販売するとか、本の価格を見直しするといった議論はありますがまだまだ、決定打が出ていません。


高橋利直

1959 年生まれ。大学では工学部電子工学を専攻。1984 年大卒後IHI に入社。火 力発電所の制御設計に携わる。1986 年3 月にIHI を退社。4 月から頭とお金を提供してくれた創業者柴田さん、体と汗を提 供した私、他1名でほんの木設立の準備が スタート。1986 年6 月に、株式会社ほん の木創業。2003 年より代表取締役。


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