第1話 モノサシ(リレーエッセイ)

 僕は、児童ホームで、15時を迎えていました。みんなでおやつを食べようとしているときです。ある子が、リクくんという子に向かって、こう言いました。「リクくんって、鬼ごっこ得意?」

 私は思いました。「リクくんは、スキップは得意だけど、全速力で走ることは少ないほうだな。全速力で走る鬼ごっこは、得意とは言いにくいなぁ」と。そのときでした。進級したばかりの小学生ユイトさんがこのようなことを言いました。「リクくんは、みんなが逃げなかったら、鬼ごっこ得意かな!」

 私は、言葉にならない感動を覚えました。文字通り、心が感じて動いた瞬間でした。ユイトさんは、標準化されたモノサシを使わずに、ユイトさんなりのモノサシを使って、みんなの前に言葉を置いたように感じました。

 この言葉を聞いた瞬間、ユイトさんは、「1人ひとりが、かけがえのない存在である」「1人ひとりが、取り替えることのできない存在である」という眼差しで、人を見ているんだなぁと感じました。
 一方私は、産業化時代の価値観にずっと囚われて、テストの点数や偏差値などの分かりやすい学力で人を見てしまったのかもしれません。子どもの頃からずっと「普通」というモノサシにビクビクしながら「普通」に追いつくように、時には溺れるような気持ちになりながら頑張ってきました。そして、疲れ果て、心が折れた学生時代を送りました。

 そんなことを感じ続けてきた私にとって、ユイトさんの優しさに溢れた言葉は、思わず涙が込み上げるような力を持っていました。このような言葉に私も、もっと小さい頃に出会っていればよかったなぁと。

 改めて、私が関わる全ての人に「1人ひとりが、かけがえのない大切な存在であること」を伝えていきたいと強く思った春の始まりでした。(キタバ)

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フレーク・フェルトハウズ、 ヒュバート・ウィンタース 著 リヒテルズ 直子 訳

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