江戸時代、鎖国の時代に世界を見据え、海からの国防を訴えた先覚者。
江戸時代、世界地図に衝撃を受け、兵学を説いた奇人、林子平の生涯。長編歴史小説
林子平(1738年~1793年)は、鎖国中の江戸時代に長崎に3度、さらに蝦夷から薩摩まで歩き、海に囲まれた日本の国防の重要性を指摘していた先覚者です。
出島のオランダ商館長から世界情勢を学び、「三国通覧図説」や「海国兵談」を著しました。
- 内容
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カラフトから琉球、小笠原諸島にまで視野を広げ、日本の領土を意識していたのです。
鎖国をしていた幕府に外国による日本侵攻の危険を指摘し、国家の再構築、教育、産業の育成など世界を見据えた戦略的視点を持つことの大切さを説いたのです。
しかし、当時の幕府は世の中を混乱させるとして子平の訴えを退け、子平の書いた書を発禁本にし、罰しました。
子平の死後60年後、1853年にペリーが開国を求め来航した後に、「砲台を数多く製造し、これらを陸地に設置する」という子平の発想が実現しました。
その後明治維新となり、子平の提言を生かした海軍や海軍伝習所が創設され、勝海舟などが学んだのです。
「海国」という地政学的な日本の防衛と国土利用を考えるいまこそ、林子平の人生や想いを知ってほしいのです。
目次
序 章 林子平の墓
第一章 子平の家系と父の出奔
第二章 父の刃傷とその後
第三章 戦う場のない武士
第四章 飛花落花の暗転
第五章 嘉善を中心にした林家
第六章 仙台藩主・宗村の藩政と最期
第七章 子平の建白書
第八章 遊学の旅へ
第九章 新たな刺激
第十章 長崎で世界と出合う
第十一章 世界地図と兵学
第十二章 長崎の暮らし
第十三章 仙台、江戸、長崎を
股に掛けて
第十四章 経済先進地への視察
第十五章 田沼意次に渡された
『赤蝦夷風説考』
第十六章 『三国通覧図説』刊行なる
第十七章 予期せぬ転落
第十八章 最期の日々
終 章 「海国」日本の先駆者
著者について
元宮城県知事、俳人、作家
ISBN
978-4-7752-0150-3
出版年月日
2025年3月15日
判型・ページ数
A5サイズ・480ページ
編集者 戸矢晃一さんからのメッセージ
林子平は、国内の移動が制限されていた時代に長崎に3度、さらに蝦夷から薩摩まで歩き、カラフトから琉球、小笠原諸島にまで視野を広げ日本の領土を意識していた。出島のオランダ商館長らから世界情勢を学んだ子平は、海に囲まれた「海国」日本は海の防衛こそが重要と訴え、「三国通覧図説」や「海国兵談」を著した。鎖国をしていた幕府に外国による日本侵攻の危険を指摘し、国家の再構築、教育、産業の育成など世界を見据えた戦略的視点を持つことの大切さを説いたのだ。しかし、幕府からは世を惑わすとして罰せられてしまう。
作者は書く。「林子平の評価は時代によって乱高下してきた。しかし、果してその思想は十分理解されたことがあったのだろうか」と。混迷が深まっていく近年の世界情勢の中で、林子平という「奇人」の生き方と思想は、私たちに何らかのヒントを与えてくれるかもしれない。