多くの人々に健康を取り戻してほしいと始まった薬湯研究秘話
幼い頃から薬草や山菜を採りながら育ち、漢方や食に興味を持たれ漢方の道へ。漢方・薬膳・東洋医学などを学び、漢方・薬膳の専門家として商品開発・漢方カウンセリングに携わる。
もう昔のことですが、家族のものが、手を上げられないほどのリウマチや冷え症に悩んでいました。医者に処方してもらった薬を飲んでいましたが、痛みは治まるものの、その薬の副作用で今度は胃をおかしくしてしまいました。
そこで、薬にばかり頼るのをやめ、温泉なら副作用がないので、温泉でじっくり体を温めることで治そうと思い、各地の温泉へ湯治に行きました。たしかに温泉でよく温まると痛みも取れ、気分転換にもなるのですが、温泉で長期間湯治することは生活の面でも経済的にも容易なことではありません。そんなときに知ったのが薬湯でした。
薬湯ならわざわざ温泉場に行かなくても済むので便利だし、近くにあれば、自分たちと同じ健康の悩みを持つ人たちの役に立つ。もともとお風呂が好きだったから自分たちでもできるのではないかと考え、方々の薬湯を訪ねて勉強し、健康道場・土浦漢方薬湯を始めました。
しかし、薬湯を始めてもやはり、遠隔地の人々はそうそう毎日入りにくるわけにはいきません。また、市販の入浴剤はとても満足できるものがありませんでした。
それならいっそ、自分たちで本当に満足できる入浴剤を作ってみようと思い立ち、生薬の組み合わせや、刻み方、配合分量の研究を始めました。私はもともと一級建築士で、薬の専門家ではありません。それだけに毎日が体当りの日々でした。とにかくさまざまな入浴剤を自分の体を実験台にして試し、独自に配合した生薬の風呂に入り、皮膚に対する感触や生薬の成分の溶け出し具合、芳香成分の出具合などを実験しました。
たとえば、黄柏は健胃薬の原料として知られ、外用の消炎剤、やけどなどに用いられていますが、入浴剤として用いる場合は刻み方が大変難しく、刻み方のちょっとした違いでお湯の感触が違い、効能が薄れてしまいます。それぞれの生薬に含まれている成分を百パーセント生かすには、組み合わされた生薬の刻み方が重要で、それによって成分の溶け出し方が変わり、配合する分量も変わってきます。常に最大限の効果で一定の効能、品質を保つために、それこそ毎日が思考錯誤の連続でした。
漢方に使われる生薬には、まだその成分の効能が解明されていないものがたくさんあります。また、薬湯の効能・効果を科学的に示すデータとしては、富山医科薬科大学、和漢薬研究所の難波恒雄教授を中心として行われた実験で川きゅうエキスの皮膚透過促進効果が認められていますが、薬湯の人間の体に及ぼす効能・効果についてはようやく科学的な解明が始まったところです。
しかし、薬湯が人間が本来持っている自然治癒力を高め、多くの人々が悩んでいる症状の回復に役立ってきたことはわかっています。薬湯入浴剤「あったか美人」に入ると、ゆったりと落ち着いた気分になり、精神的にもリラックスできます。また、体の芯までポカポカと温まります。
それによって血流が改善し、体の各所にある冷えが解消し、内臓器官や体のすみずみの細胞に新鮮な酸素や栄養物を届けて新陳代謝を活発にし、血液や細胞の中の老廃物や毒素を排出します。こうした薬湯の効果が、収縮・緊張した筋肉を緩めて痛みやこりを取り除き、体全体を生き生きとさせ、傷ついたり、老化した皮膚を再生し、慢性的な症状を改善します。
よく「漢方は気長に続けなさい」といわれますが、薬湯も気長に続けることが大切です。必ずしも即効性があるとはいえませんが、それだけに副作用もなく安心して健康の回復に勤めることができます。また、ゆったり落ち着ける娯楽のひとつとして考えれば日頃のストレスを解消することもできます。それが健康にとって一番よいことです。 ほんの木「自然なくらし」のオリジナルの薬湯入浴剤「あったか美人」は、気長に続けられる漢方入浴剤です。これを機に薬湯生活を始めてみてはいかがでしょうか。
(登場者は仮名。お住まい、年齡等記事内容は取材当時のものです)